政府は特に人手不足が深刻な業種の一つに「建設業」を挙げ、中小企業の省力化への投資促進策を一段と強化する方針だ。国土交通省が建設業向けの「省力化投資促進プラン」を3月中にも策定。AIやロボットなどの自動化技術の活用をはじめ、DXを加速する投資を推進する。まずは「中小企業省力化投資補助金」など既存施策を徹底的に運用。業種特有の課題を把握しながら、無駄が多い業務の標準化などサプライチェーン(供給網)全体で省力化に寄与する仕組みの構築も含めた検討にも乗り出す。
石破茂首相が16日、製造業などの中小企業経営者と車座で意見を交わした場で、建設業など12業種でのプラン策定を表明した。人材確保のためやむを得ず行う「防衛的賃上げ」ではなく、「生産性を上げ、それを原資に賃上げしないと意味がない」と強調。中小企業まで省力化投資を普及させる体制を整え、現場従事者のスキル向上や適正評価の制度化にも取り組む意向を示した。17日にはプラン策定へのキックオフとなる関係府省連絡会議を開いた。
既存施策の一つの中小企業省力化投資補助金では、省力化に寄与する汎用(はんよう)製品をカタログから選ぶ方法で、その導入費用を補助する。中小企業庁が、国交省と協議し建設業向けに補助対象となる製品カテゴリーを順次拡充。16日には▽シンダーコンクリート解体機▽チルトローテータ付ショベル▽建設現場作業ロボット(鉄筋組み立て作業ロボット)-の3件を追加した。
建設業向けは▽測量機(自動視準・自動追尾機能付き高機能トータルステーション)▽地上型3Dレーザースキャナー▽GNSS測量機(RTK)▽清掃ロボット▽マシンコントロール(MC)・マシンガイダンス(MG)機能付きショベル-の5件などもカテゴリーに登録済み。メーカーによる個別製品の応募を踏まえ各製品のカタログ登録や販売店登録が進めば、建設業者による補助金の交付申請を受け付ける段階に入る。現時点で個別製品がカタログ登録されているのはトータルステーションだけだ。
政府はプラン策定に当たって関係府省に▽各業界の実態把握の深掘り▽多面的な投資促進策の検討▽全国的なサポート体制整備の検討-の三つを指示している。
例えば物流業界で進むパレット標準化など、業界慣習の見直しで省力化を促す方策も検討課題になるとみられる。