国土強靱化実施中期計画を巡る政府・与党の議論が本格化してきた。自民党が30日に開いた国土強靱化推進本部(本部長・佐藤信秋参院議員)の会合=写真=で、政府は計画期間を5年めどとする方針を説明。中期計画の素案を3月下旬までに示す考えで、2月中旬には関係省庁に対し計画に盛り込む施策と事業の提出を求める予定だ。政府は6月までの計画策定を目指しており、同本部は提言の提出を視野に入れている。
中期計画は「防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策」の後継となる。中期計画を巡っては石破茂首相が今国会の施設方針演説で、15兆円規模の加速化対策を超える事業規模や6月までの策定を目指す考えを示している。
佐藤本部長の就任後、同本部が会合を開くのは初めて。冒頭、昨年12月に急逝した足立敏之氏に黙とうをささげた。佐藤本部長は被害額が1000兆円に上るとする土木学会の首都直下地震の被害想定に触れ「21兆円の地震対策をすれば被害額を4割軽減することが期待できる」と述べ、十分な事業量確保の必要性を強調した。
同本部は中期計画策定に向けた全体的な議論を行った。中期計画には防災・減災のハード対策とともに、技術者育成支援やテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の充実などのソフト施策も盛り込まれる見込み。28日に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故についても「検証し、再発防止対策を踏まえる」(政府関係者)という。
佐藤本部長は会合後、「全体のバランスを見てどの分野を加速すべきなどといったことを整理している最中だ」と述べた。議員からは災害が激甚化していることで「財政制約であれもできない、これもできないというのはおかしな話だ」などの意見も出たという。
政府は加速化対策の成果を検証した上で、中期計画に盛り込む施策を決める方針。検証は内閣官房の「国土強靱化推進会議」が進めており、2月5日に開く次回会合で、詳細な検証結果と中期計画に向けた考え方などを示す見通しだ。同会議は個別施策の95%が達成または達成見込みと評価。中期計画では「施策の重点化や施策間連携の強化に取り組む」としている。
中期計画の事業期間は、石破首相が規模感を示したことを受け3カ年などさまざまな意見が挙がっている。政府関係者によると「インフラ整備を伴うことを考えると3年では短い。7年は中途半端となるので5カ年が妥当」という見方も出ている。