回転窓/試される建築の力

2025年1月31日 論説・コラム [1面]

文字サイズ

 トランプ米大統領が20日に2期目の政権をスタートさせ、1週間で30を超える大統領令に署名した。その一つで公共建築に関するものがあると建築団体の賀詞交歓会で話題になった▼「美しい連邦公共建築」と題した大統領令で市民社会の美しい建築を、連邦政府の建築がリードしていくことを目的としている。素晴らしい内容に思えるが、「美しい建築」を米国の古典的伝統に沿った建築様式と規定。公共建築に画一的なスタイルを強いるものとなっている▼この大統領令は1期目の2020年12月に発令され、21年2月にバイデン氏が就任早々に廃止した。前回は米国建築家協会(AIA)が柔軟性に欠ける好みを押し付け、創造性を抑制するものだと批判。今回も反対表明が出るだろう▼米国第一主義の具体化により国内外で対立や分断が激化すると見られる。公共建築も一つの様式が望ましいとすることで、賛成反対が入り乱れる分断につながりかねない▼米国の哲学者マイケル・サンデル氏は公園や文化施設、図書館など人が集まる公共空間・建築が分断を乗り越えるのに必要と説く。社会問題の解決へ建築の力が試される。