大成建設は３Ｄプリンティング技術を用いて既設柱に巻き立て耐震補強を施し、耐震性能を確認する世界初の交番載荷実験を行った。１月３０日に横浜市戸塚区の同社技術センターで公開した。鉄筋に比べ５分の１程度と軽量で低磁性や耐腐食性、高強度、低コストといった特性を持つ巻き立て補強筋「バサルトＦＲＴＰロッド」と、３Ｄプリンティング技術を組み合わせ、通常のＲＣ柱に比べ耐震性能が向上することを確認している。
　公開実験は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム（ＳＩＰ）第３期「スマートインフラマネジメントシステムの構築」課題のうち、サブ課題Ｂ「先進的なインフラメンテナンスサイクルの構築」（研究開発責任者・石田哲也東京大学教授）に基づく取り組みの一環として実施。課題の研究推進法人である土木研究所などからマネジメントや開発に携わる約３０人の関係者が視察した。
　同社は、巻き立て部に配置する補強筋を回避しながら短繊維補強モルタルを用いて外殻を３Ｄプリンティングで構築し、既設柱と外殻の間に高流動コンクリートを打設することによって巻き立て耐震補強を行った。コンクリ打設時に作用する圧力を高強度の外殻が負担することで外部支保工を完全に省略でき、耐震補強の生産性向上を実現する。
　巻き立て補強筋には今回と同じサブ課題Ｂで別途開発されたバサルトＦＲＴＰロッドを使用。天然素材の玄武岩を溶融解して紡いだ糸で作ったバサルト繊維にポリプロピレン樹脂を混ぜ、熱可塑性プラスチックで被覆して製造した。３Ｄプリンティング技術と組み合わせることにより、既設柱の巻き立て耐震補強について通常のＲＣ柱に比べ省力化や高強度化、高耐久化が期待できる。
　ＳＩＰ第３期の久田真プログラムディレクター（東北大学大学院教授）は「今回の技術が世界と渡り合える技術であることを広く発信してほしい。今後、イノベーションを加速、先導するための共通ルールを作っていくことも重要だ」と講評した。