リバスタ(東京都江東区、高橋巧代表取締役)が提供する現場技能者向けポイント付与サービス「ビルダーズポイント」の採用件数が順調に増えている。昨年12月時点で、約15社が一部の現場に導入し、技能者による専用アプリケーションの登録件数も増えている。ポイントを付与される技能者だけでなく、元請会社も「技能者とのコミュニケーションツールとして利用できる」とし、双方にメリットがあるという。同サービスを元請である建設会社はどんな目的で、どのように使っているのか。現場で採用している西松建設の森田正登所長に話を聞いた。
★貯まったポイントはPayPayに★
同サービスは、建設キャリアアップシステム(CCUS)のカードタッチや日々の入退場認証、安全講習会への参加など、元請会社(ゼネコン)が設定した条件を満たせば専用アプリケーションを通じて技能者にポイントが付与される仕組み。専用アプリは「App Store」や「Google Playストア」で、技能者個人のスマートフォンにインストールできる。
サービスの大きな特徴は、元請企業から付与されたポイントをPayPay(ペイペイ)マネーライトに変換でき、PayPayと提携する加盟店やサービスが利用できること。いわば換金性のあるポイントで、技能者は貯まったポイントを自由に使える。リバスタが開発し、2023年10月から鹿島、戸田建設、西松建設の3社と共同で実証実験を実施。その効果を確認した上で、昨年6月に本格的なサービスを開始した。
★毎日のタッチで50ポイント付与★
では、ゼネコンはどういう目的で、何を対象にポイントを付与しているのか。一昨年の実証実験にも協力し、昨年8月から本格導入した西松建設中部支店滋賀竜王出張所の森田所長は「本社のDX部門から実証実験への協力要請があり、短期間だったが下請企業5~6社に限定して20~30人の技能者に登録してもらった。毎月1回行っている安全大会の参加者に1000ポイントを付与したが、登録していない周りの技能者から“いいな”という声が多数あり、これは面白いと思い、昨年4月に始まった物流施設の現場に本格導入した」。
導入に当たり、現場の職員だけでなく、本社や中部支店と打ち合わせを実施。ポイントの付与を〈1〉毎月行う安全大会の参加者に1000ポイント〈2〉安全大会での優良表彰者(2人程度)に3000ポイント〈3〉CCUS登録者の現場タッチ1回当たり50ポイント-とした。
対象は現場で働く全技能者。新規入場者教育の際、ビルダーズポイントや専用アプリのインストール方法などを説明し、利用を促した。昨年12月現在で現場に入場する技能者は100~120人。このうち40~50人が専用アプリを登録したという。
森田所長は「もっと多くの技能者が登録するかと思ったが、PayPayを使っていないなどの理由で、利用率は半分程度にとどまった。本社や支店にはポイントによる支出を1カ月当たり15万円程度として了承を得たが、その金額には達していない」。
★働く者同士の距離感縮む★
このポイントサービスで元請企業は新たな金銭的な負担が生じる。これまでも安全大会でクオカードを配布するなど、安全意識の醸成に向け、技能者に対し一定の支出をしてきた。ただ、CCUSの登録者に毎日タッチするだけで50ポイントとなると、その負担は膨らむ。
森田所長は「技能者の安全意識が高まり、CCUSの加入が増えて現場のタッチ率が高まれば、それは大きな意義がある」と強調する。さらに「これまで元請企業は1次、2次下請などの企業と企業同士のお付き合いという感じだったが、このサービスは現場で働く者同士の新たなコミュニケーションツールの一つになり、距離感が縮まる。最終的には技能者不足の解消にもつながるのではないか」と指摘する。
一方、ポイントをもらった技能者はどう思っているのか。リバスタの調査によると、「この仕組みがある現場に行きたいとなるだろう」「ノベルティなどをもらうよりも、自分で好きなものを買えるのがうれしい」などの声のほか、「何をすればポイントをもらえるのか、自分たちでも考えてみたい」という意欲的な意見もあったという。
★ささやかな楽しみが現場選び左右?★
現場はこれまでは躯体関係の技能者が多かったが、1月以降は仕上げ関係の技能者が増え、毎日200~250人になった。「これから100人程度は登録してくれるのではないか。ポイントがPayPay以外のサービスでも使えるようになれば、もっと利用率が高まるだろう」(森田所長)。
毎日現場に行けばポイントが付く現場と、付かない現場。技能者はどちらの現場に行きたいと思うのか。給与とは別にもらえるポイントで現場の帰りがけに飲み物やお弁当が買える。家族にお土産を買って帰る人もいるかもしれない。現場での「ポイ活」を通じたささやかな楽しみが、技能者にとって現場選びの理由の一つになる日が来るかもしれない。