住友大阪セメントグループのクリコン(滋賀県愛荘町、池ノ内基士社長)は従来の低炭素型コンクリートに比べ、耐久性や製造時の安全性を大きく高めたコンクリートを開発した。アルカリ源を、劇物を用いる水溶液から粉体に置き換え作業工程を簡略化。ヒューム管を試作し性能を実証した。4月に任意団体「GEPC(ジオエレメント・プレキャストコンクリート)研究会」を設立し、製品展開へ参加企業を募る。
「ジオエレメントコンクリート」はセメントの代わりに、二酸化炭素(CO2)排出量が少ない高炉スラグ微粉末やフライアッシュ(石炭灰)を使用。アルカリ源に劇物のカセイソーダを用いる高アルカリ性水溶液ではなく、オルトケイ酸ナトリウムを主とする粉体「ジオエレメント」を使い安全性を高めた。試作したヒューム管ではセメントコンクリート製に比べ耐酸性、耐凍結性に優れることを確かめた。日本下水道協会が定める規格も満たした。
セメントコンクリートと同様の工程と設備で製造可能。製造コストは1・2~1・3倍程度を見込むが、1トン当たりのCO2排出量を約80%削減できるという。ジオエレメントの基本技術は住友大阪セメント、大阪産業大学、ケミカル工事の3者で特許を出願している。
研究会ではヒューム管以外の適用や、アルカリ活性材料製品の性能基準の策定などを目指す。事務局はクリコン本社に置く予定。建材メーカーを中心に20社以上の参加を見込む。
4日に東京都港区の住友大阪セメント本社で開いた記者会見で、クリコンの池ノ内社長は「特性を生かした製品開発へ、専門家と企業の橋渡しをしたい。幅広い業種に参加してほしい」と説明。研究を主導する大分工業高等専門学校の一宮一夫教授は「社会実装の加速には学術だけでは難しく、企業の力を借りたい」と述べた。