内閣官房の国土強靱化推進会議(議長・小林潔司京都大学名誉教授)は5日、国土強靱化実施中期計画の策定方針案を公表した。重点施策に地震や大雨といった複合災害や、気候変動を踏まえた流域治水、港湾の協働防護などを盛り込んだほか、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け上下水道の老朽化対策も追記した。政府は今後、地方自治体などの意見を聞き、3月下旬に開く次回会合で実施中期計画の素案を示す方針。6月に計画の閣議決定を目指している。
策定方針案では、これまでの「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」と「同5か年加速化対策」が着実に効果を発揮していると評価。その上で切迫する巨大地震や激甚化、頻発化する水害により強靱化の「さらなる加速化・深化を図る必要がある」とし、「施策の重点化」と省庁を超えた「施策連携強化」の方向性を提示した。
具体的な施策は▽災害外力・耐力の変化への対応▽人口減少等の社会状況の変化への対応▽事業実施環境の変化への対応-の3項目に整理した。このうち災害外力・耐力の変化への対応では流域治水の推進、巨大地震に備えた戦略的な防災インフラ整備、デジタル技術を活用した災害対応力向上などを盛り込んだ。
能登半島を襲った2024年1月の地震と同9月の豪雨を念頭に、半島の防災・強靱化や、上下水道や送電網などの耐震性強化、複合災害・2次災害への対応強化、住宅・建築物の耐震化なども掲げた。グリーンインフラや官民による港湾の協働防護、インフラメンテナンスの効率化・高度化といった新たな視点も加えた。八潮市の道路陥没事故を踏まえ「緊急性を要する損傷箇所の集中的な修繕・更新、防災・減災対策との一体的推進」の項目も追記した。
計画期間は26~30年度の5カ年とする考えを示した。事業規模は「おおむね15兆円程度の事業規模で実施中の5か年加速化対策を上回る水準が適切」とした。
策定方針案は同会議でおおむね了承され、来週にも開く関係省庁会議に提出される予定。その後、全国の都道府県や市区町村、経済団体などに周知し意見を求める。3週間程度の期間を設け回答を受け付ける。