政府/エネ基本計画、温暖化対策計画、GX戦略を閣議決定/脱炭素で経済成長推進

2025年2月19日 行政・団体 [2面]

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 政府は18日、エネルギー政策の中長期の指針となる「第7次エネルギー基本計画(第7次エネ基)」と、温室効果ガスの新しい削減目標を盛り込んだ「地球温暖化対策計画」、脱炭素化を経済成長につなげる戦略「グリーントランスフォーメーション(GX)2040ビジョン」をそれぞれ閣議決定した。ガス排出を2040年度に13年度比で73%削減する目標を設定。再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源のある地域に企業誘致を促すなどの産業政策を盛り込んでいる。
 エネルギー基本計画の改定は約3年ぶり。データセンターの新増設などで電力需要が増加していくことから、第7次エネ基では再エネを最大限活用し、40年度の発電量に占める再エネ比率を23年度実績(22・9%)の倍近い4~5割程度に引き上げる。再エネは「長期安定電源化」を目指し、浮体式洋上風力やペロブスカイト太陽電池の導入などを推進する。
 原発の比率は、建設中を含めた36基ほぼすべての稼働を前提に2割程度とする。再稼働は「官民を挙げて取り組む」とした。建て替えは、廃炉を決めた事業者の発電所サイト内で次世代革新炉とすることが対象。これまでの計画にあった「可能な限り依存度を低減する」の文言は削除した。温室効果ガス排出の多い火力発電は現状の約7割を3~4割に縮小する。計画案に対しては、4万件以上の一般意見が寄せられ、原発関連が多かったという。
 温室効果ガスの次期削減目標(NDC)は、世界の平均気温の上昇を1・5度に抑える世界目標の実現に向け、13年度比で35年度に60%減、40年度に73%減と設定。地球温暖化対策計画は、再エネや原子力を最大限活用する一方、石炭火力を次第に減らすエネルギー転換を進めるとした。住宅や半導体工場などの省エネ対策、電力需要の大きいデータセンターの効率改善、ペロブスカイト太陽電池の導入支援などを推進する。二酸化炭素(CO2)に価格を付け、企業や人の行動を変える成長志向型の「カーボンプライシング」、高度な再資源化や太陽光パネルのリサイクルを促進するような「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の実現に取り組む。
 分野別のうち、建築物では建築物省エネ法の規制を強化し、小規模建築物の省エネ基準への適合を25年度に義務化する。30年度以降に新築する建築物は、ZEB水準の省エネ性能の確保に取り組む。道路整備は総合的なCO2削減の効果を判断しつつ、環状道路などの幹線ネットワークの強化や、道路空間への再エネの導入を進めるとしている。
 NDCは同日、国連気候変動枠組条約事務局に提出した。その達成を目指す「政府実行計画」には、政府の庁舎や土地に太陽光発電設備を最大限設置することや、ペロブスカイト太陽電池の導入目標を検討することが入った。新規の建築事業は「原則ZEB Oriented相当以上」とし、30年度以降はさらに高い省エネ性能を目指すこととしている。
 GX2040ビジョンでは、脱炭素、経済成長、エネルギー安定供給の「同時実現」するための方向性を示した。脱炭素電源と新たな産業用地の整備を進めていく。25年通常国会に資源有効利用促進法の改正案を提出し、再生材の供給・利活用をさらに進める。GX推進法の改正案も提出し、26年度からの排出量取引制度の本格実施、28年度の化石燃料賦課金の導入への環境整備を進める。
 18日の閣議後の会見で武藤容治経済産業相は、米国のトランプ大統領が化石燃料への回帰を表明していることに関し、「動向は今後も注視が必要」とした上で、「各国が脱炭素と産業競争力強化の両立に向けた取り組みを進めている。わが国もGXを着実に進めねばならない」と述べた。