西日本高速道路会社は、1月から2月にかけて中国自動車道(中国支社)と沖縄自動車道(九州支社)の工事現場で発生した重大事故を受け、すべての工事を対象に緊急安全点検を行うなど、協力業者を含む受注各社に再発防止と安全意識の向上を呼び掛けている。
中国支社管内では1月27日に中国自動車道の床版取り換え工事でつり足場の設置作業中に作業員5人が墜落し、2人の尊い命が失われる重大事故が発生。今月2日には人的被害はなかったものの、九州支社管内でも沖縄自動車道の床版取り換え工事で門型クレーン落下事故が発生した。
同社は相次ぐ事故を重く受け止め、現在稼働中の全工事で緊急安全点検を実施。中国道のつり足場事故と同様の工事は一時中止し、墜落・転落に関連する安全設備などへの一斉点検に加え、つり足場未設置の工事を対象に施工計画や構造計算などが安全上問題ないかを確認している。7日以降、安全が確認できた工事から順次一時中止を解除し、12日までに大半の工事で作業を再開した。
全社的な取り組みに加え、新名神高速道路の建設事業が最盛期を迎えている関西支社では重大事故の連鎖を防ぐため5日、上部工とつり足場工事の受注者を対象とした緊急安全大会を独自に開催。同社社員を含め約200人が参加した。
冒頭、安達雅人執行役員関西支社長が「現在の状況は2016年に発生した新名神高速道路有馬川橋、余野川橋の事故の連鎖に似た状況だ」と危機感を示し、安藤亮介構造技術課長は過去の事故事例を説明しながら「重大事故の主な要因は施工計画と現場の不整合であり、手順に従って着実に作業を行えば事故を防げる」と初心に立ち返った現場管理を要請した。加藤寛之技術計画課長も「施工計画は作業員の安全、命を守る約束事と考えてほしい」と呼び掛けた。
発注者と受注者・協力業者が一体となった安全管理の徹底が求められる中、小笹浩司取締役兼常務執行役員建設事業本部長は「重大リスクマネジメントを機能させるために必要な取り組みを一層強化する。受注者側も外国人労働者の増加や熟練技術者の減少など労働状況が変化する中で、協力業者との密なコミュニケーションや訓練の強化などを通じてリスク管理能力をさらに高め、常に安全管理に関する緊張感を持ってほしい」と訴えかけている。