内閣府はPFI事業の物価変動対策として、スライド条項の適用を巡る検討を進める。PFI法に基づく直近の事業を調査したところ、47件は全体・単品・インフレの各スライド条項とも規定されていたが、いずれの規定もないのが57件あった。受注者からは、条項の運用のばらつきを指摘する意見も出ており、契約のひな型となる「PFI標準契約1」に全体スライドの記載を追加することを検討するとともに、適用の状況を注視していく。
民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)が158事業を対象に行った調査によると、全体・単品・インフレの各スライド条項のうち、全体は70件、単品は79件、インフレは64件で規定があった。規定の有無はさまざまで、緩やかな価格水準の変動に対応する全体スライドだけが規定されていたり、特定資材の急激な価格変動に対応する単品スライドや、急激な価格水準の変動に多応するインフレスライドの規定がない事業が少なくなかった。
工事などへの物価変動の影響が大きく、日本建設業連合会は2024年6月に国や地方自治体でスライド条項の適用にばらつきが見られるとも指摘した。その上でスライド条項の適用をPFI事業の関係ガイドラインに明記するとともに、すべての発注者に適用するよう申し入れていた。
スライド条項を巡っては、PFIのような官民連携の事業領域に物価高騰の影響が出ていることで、川崎市は3日公表の「民間活用(川崎版PPP)推進方針」に、通常範囲を超える物価変動の場合には市と民間事業者とで「事業手法や性質に応じて適切にリスクを分担する」と明記。物価変動に対する趣旨を明確にするのが狙いで、事業継続の必要な措置という認識も示した。一方で「通常の範囲内のインフレ・デフレについては民間事業者のリスク」とした。
PFI標準契約1は全体スライドの規定そのものがなく、単品スライドやインフレスライドの官民負担の割合を規定していない。同推進室は公共工事標準請負契約約款や国の直轄工事の規定を参考に、全体スライドの追加を検討する考え。受発注者の契約変更協議が活発になっていることで、実態を見た物価変動対策を進める。