工場探訪/大林道路大分センターアスコン(大分市)、工場全体をDX・自動化

2025年2月21日 企業・経営 [3面]

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 大林道路が次世代モデルのアスファルト合材工場と位置付ける「大分センターアスコン」(大分市)。田中鉄工(佐賀県基山町、末吉文晴社長)と開発した製品事業運営を効率化、最適化するさまざまなデジタル(DX)ツールの連携により、施工現場と運搬車両の情報をひも付けた製造のプロセスの自動化による出荷を実現している。材料を貯蔵してプラント本体に供給するまでのルートも設備化し、場内で材料供給するホイールローダーの稼働も不要とした。将来的に工場従事者の半減を目指す。
 大分センターアスコンは年間10万トンを製造、出荷する大林道路にとって主力工場の一つ。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2024年6月に公表した指針を踏まえ、製造部門の業務DX化や設備の自動化に着目して最適化する「スマートマニュファクチャリングBIツール」を先行導入した。
 同ツールは統合API連携サーバーやデータ保存ストレージを介し▽ウェブから工事情報を収集する受注管理▽ダンプ台数を自動算出する配車管理▽製造を自動化する出荷管理▽製造配合と出荷情報を整合させる製造管理▽製造・現場双方が車両情報を把握する運行管理▽契約情報と施工情報を統合する品質管理-などの各システムを連携させる仕組み。受注管理や出荷管理、製造管理で先行しており、残るシステムは25年度にも開発する。
 時間外労働上限規制に対応して働き方改革を推進する必要があり、原材料高騰分の価格転嫁が思うように進まずコスト削減や収益性の向上が急務だったことも背景にある。そこで実現性の高いシステムから順次導入していった。
 その一つが施工現場と運搬車両の情報をひも付けて製造プロセスを自動化する出荷管理システム。さまざまなDXツールでダンプの入場や受け付け、場内誘導、合材の自動積み込み、出荷伝票の受け渡し、退場までを運転手が降車せずに完結するドライブスルーのシステムを導入した。
 場内での車両渋滞緩和や歩行による事故防止だけでなく、事務担当者の作業効率も向上。夜間の少量出荷を無人で行うことも可能となった。同システムによる製造情報と配合情報の一元管理に基づく出荷によって、適切な品質確保によるコンプライアンス強化にもつなげたいという。
 材料の貯蔵設備として24年11月末から本格運用する新材コルゲートサイロ8基(貯蔵量1基当たり280トン)と再生骨材貯蔵サイロ4基(同120トン)も生産性向上に貢献している。いずれも雨水などの浸水による含水比率上昇を抑制。プラント本体への供給ルートも設備化、自動化しており、アスファルト合材の製造プロセスにおいて場内でのホイールローダー稼働がなくなり人件費や燃料費のコストダウン、二酸化炭素(CO2)排出量の削減も実現した。
 同社によると、再生骨材貯蔵サイロは世界初で初導入した。サイロ内で石や砂など材料同士の固まりを防ぐブロッキング対策用の設備として、材料を入れ替えられる循環路を開発し採用している。
 同社は大分工場での先行事例を全国に順次広げていく考えだ。当面は品質確保に向け合材の配合管理を徹底するシステム強化に万全を期す。担当者は「将来的にはAIも取り入れ、工場運営のさらなる効率化を目指す」と展望する。