八潮道路陥没事故1カ月/復旧方針・対策の議論続く、インフラメンテ再建へ

2025年2月28日 行政・団体 [1面]

文字サイズ

 1月28日に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故から1カ月になる。下水道管の破損に起因するとされ、県による避難要請が19日に解除されたものの、がれき撤去、スロープの強化、下水迂回(うかい)路の確保などの対応や復旧方針の検討が続く。事故を受け国土交通省は有識者委員会の初会合を21日に開催した。老朽化したインフラは下水分野にとどまらず、「インフラメンテナンスを再建」(中野洋昌国交相)する事態にもなってきた。=4面に関連記事
 県は国土技術政策総合研究所(国総研)、日本下水道事業団(JS)、日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)の協力を得て復旧方針などを検討中。大野元裕知事は20日に石破茂首相に財政支援を申し入れ、会談後に「根本的にインフラをどのように点検し更新するか、踏み込んでほしい」と要望した。
 会談で石破首相は「あちこちで(類似の事故が)起こる不安は多くの国民が持っている」と懸念を表明した。同日開いた政府のデジタル行財政改革会議で石破首相は、全国の上下水道システムのDXを推進するよう指示。同会議では公共インフラの老朽化に備えるためにDXの導入推進を確認した。
 「このような事故を起こしてはならないという強い決意を持って対策を講じたい」。中野国交相は21日の「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」の初会合でそう決意を示した。同委員会は大規模下水道の点検、更新・維持管理制度などを議論し、夏に最終取りまとめを行う。家田仁委員長(政策研究大学院大学教授)は「インフラマネジメントの状態は決して万全でないのが実情」と指摘し、関係省庁を挙げて対応することの重要性を強調した。
 事故の影響はインフラ政策に広がりを見せる。政府が6月の閣議決定を目指す国土強靱化実施中期計画に関し、関係省庁が14日に確認した策定方針には事故も踏まえ、老朽化対策の強力な推進と、予防保全型メンテナンスへの移行がうたわれた。計画検討を主導する内閣官房の幹部は「国交省の対策を反映することになるだろう」と話す。
 事故の発生以降、路面下の空洞調査技術を保有するメーカーや専門業者には、投資家やゼネコンなどからの接触が相次いでいるという。過去、路面下の空洞調査は業務として道路保全技術センターが担っていた。同センターは当時の政権の公益法人改革で2009年11月に廃止が表明され、清算手続きが進むことになった。一部機能は関係機関に引き継がれたが、中央府省庁内には同センターの必要性に理解を示す見方がある。
 事故の衝撃と影響は12年12月の笹子トンネル天井板崩落事故に匹敵するとされる。土木学会の佐々木葉会長はインフラの老朽化対策や維持管理・更新を含め、健全性の確保にとどまらない「より広い観点からの議論」を求め、対話と議論の場を用意する考えを26日に表明した。生活や企業活動に欠かせないインフラとの向き合い方が問われ続けていく。