中建審WGで業界団体らが意見/賃金確認の第三者機関検討を、対応コスト増に懸念も

2025年2月28日 行政・団体 [1面]

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 改正建設業法で定める「労務費に関する基準(標準労務費)」の実効性確保策の一環として適正な労務費・賃金の行き渡り方策を議論した26日の中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)で、技能者への賃金支払いの確認や適正化指導の実施主体として第三者機関の設立が適切との意見が複数の建設業団体からあった。各団体は建設業者全体をカバーした調査・指導の必要性を強調しつつも、国土交通省の建設Gメンを補完するような役割を既存の業団体が担うことは困難との見方を示した。=2面に関連記事
 国交省が適正な賃金支払いを促進する業団体などの自主的な活動を提案したことに、日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)が返答した。
 日建連の白石一尚人材確保・育成部会長の代理で出席した相良天章賃金・社会保険加入推進専門部会座長は、調査・指導の実施主体に「適切な権限と体制が必要で既存の業団体にはふさわしくない」と指摘。適正な労務費を行き渡らせる観点で最上流の発注者を含めた支払い状況の確認が必要な場合、「業団体の立場で民間発注者を指導するのは現実的ではない」とも話し、中立的機関への委託などが望ましいとした。
 全建を代表し出席した荒木雷太岡山県建設業協会会長は、各都道府県協会では会員企業数や体制面から「建設Gメンを補完する役割を担う効果は見込めない」との見解を示し、代替策として「Gメンを補完する組織を国交省から外部委託するか、建設業者全体を指導できる第三者機関の設立を検討してほしい」と要望した。岡山建協で昨年12月から「Gメン通報制度」を運用しているが、業団体の関与がリスクと認識され通報件数が少ない可能性があるとし「別団体で運用する方がいいと思う」と話した。
 WGでは第三者機関などの設置をコスト面などから懸念する声も上がった。岩田正吾建設産業専門団体連合会(建専連)会長は「契約当事者間の納得が最優先」と強調。例えば下請が賃金台帳や就業規則を開示して元請に説明し、適切な行き渡りを担保すべきとした。
 学識者から西野佐弥香京都大学大学院工学研究科准教授も、賃金支払いを確認する組織の新設や制度の導入が「書類作成の経費の増加を招き、ひいては工事費上昇に拍車を掛ける」可能性を指摘。契約当事者間で賃金支払いを約束する「コミットメント」などの取り組みに重きを置き、行政主体が支援する方法が望ましいとした。