深松組創業100周年・深松努社長に聞く/より良い仙台のため、地域に喜ばれる仕事を

2025年3月3日 企業・経営 [7面]

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 深松組(仙台市青葉区、深松努社長)が1日に創業100周年を迎えた。高度経済成長と歩を同じくして公共インフラを中心に土木、建築で実績を重ねた。開発や観光など新規分野に積極的に参入し成長の基盤を築いてきた。創業者・深松幸太郎が目指した「地域に本当に必要とされる企業」という意志を受け継ぎ、今後も仙台、そして東北の発展に貢献し続ける。
 --創業100年という大きな節目を迎えた。
 「当社は1925年に富山県朝日町で水力発電所建設の施工を主な事業として創業した。祖父からバトンを受けた父の勇が官公庁の土木・建築工事、民間建築、不動産賃貸業などで企業規模を大きくした。これまでの道のりは決して平たんでなく、バブル崩壊による建設不況、価格競争の激化と収益悪化など苦境の時代が続いた」
 「私が社長に就任した2008年にはリーマンショックがあり、売上高の激減を体験した。会社は苦境に直面したが、今振り返ると良い経験だったと思う。我慢が続く状況で東日本大震災が起こり、壊滅的な被害を受けた地域を目の当たりにして、“何とかしなければ”という思いがこみ上げた。奮闘の日々だったが、復旧・復興工事を多く手掛けたことで、創業者の思いを多少なりとも実践できたと考えている」
 --苦境を乗り越える原動力は。
 「ピンチは10年単位で訪れる。そのたびに父も祖父も臨機応変に対応してきた。売り上げが7割減になった時期もあったが人員整理をしたことは一度もない。企業経営の根幹は人と人、組織と組織のつながりだ。地元企業として雇用を守ることは地域のためになると信じている」
 --経営基盤の強化に向け多角化で経営手腕を発揮している。
 「人口減少社会に入り今までの当たり前が通用しなくなる。当社が持つスキルを駆使し、さまざまな課題を解決したい。難病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)患者向けの施設整備は未来志向の取り組みといえる。ある時、ALS患者を受け入れる施設がないという悩みを聞いた。得意とするハードを整備することで問題解決に貢献できると思い、仙台市太白区の長町に施設を建設している。食・農・温泉の複合商業施設『アクアイグニス仙台』は開業3年を迎えた。その土地にとっては当たり前のことでも気付きによって価値が生まれ、地域の活性化につながることがある。情報収集の感度を高め何ができるか知恵を絞ることで、新たな発見や仕事が見つかる」
 --建設業は人手不足や資材高騰など多種多様な問題に直面している。
 「この2年で大手と地元の初任給は大きな差が生まれた。少子化の影響は顕著で限られた人材を巡り産業間、企業間で採用競争が激烈になっている。埼玉県八潮市で起こった道路陥没や除雪、防疫などいざという時に対応する地元建設業がこれ以上減っては、安全で安心できる暮らしを支え守ることができなくなる。建設業が社会に与える影響はわれわれが思っている以上に大きい」
 --今後の経営戦略を。
 「100周年事業の一環で社屋を移転新築した。仕事に対する社員のモチベーションを高めるため、人事評価の基準見直しに着手した。課題は若い職人に技術を承継できるかだ。現場は事業の最前線で、地域に喜ばれる仕事を続ける必要がある。次世代に今よりも良い仙台を残したい。逃げずに課題と向き合い真摯(しんし)に考え、考え抜いて解決していく。『仙台、宮城を元気にする』という思いをすべての社員、協力会社と共有し、仕事と正面から向き合っていく」。