東日本大震災の発生から約2年後の2013年、現場事務の担当として入社した。持ち前の明るい性格と高いコミュニケーション能力で事務所の運営をテキパキとこなす姿が評判になり、現場監督の先輩社員から土木技術者になることを勧められた。
専門教育を受けた経験はなく「初めは興味本位だった」のが正直な気持ち。ただ「やるからには負けたくない」と一念発起して努力を重ね、社内初の女性土木技術者として工事を切り盛りする立場になった。
事務職から技術職への転身は決して平たんな道のりではなかった。写真撮影や生コンクリートの品質チェックなど施工管理の基本を一から学び、土木施工管理技士など資格取得もコツコツと続けた。陸上だけでなく海上の工事にも携わり「現場の経験を積めば積むほど自分が関わる仕事の重要性を実感した」。艱難(かんなん)辛苦を乗り越え、一線級の技術者として一目置かれる存在になった。
技術者として歩み始めたばかりの頃、現場で活躍する女性はまれな存在だった。時は流れて現在、工事現場は年齢や性別に関係なく誰もが活躍できる環境になってきた。次代を担う若手の指導も大切な役目になっている。胸に秘めるのは「より多くの女性に建設業へ興味を持ってもらい、チャレンジしてほしい」という思い。4月には女性技術者が土木部に配属予定といい、対面できる日を楽しみにしている。
(かとう・ひろえ)