国土交通省が新しい現場マネジメント手法として展開するICT施工の「ステージ2」の試行工事で、施工データの見える化により効率的な現場作業を実現し工程短縮や省人化の効果が生まれた事例が出てきた。国交省は当面の目指す姿として施工業者が施工データを抵抗なく活用できる環境を整え、こうした省人化効果を直轄工事全体に広げたい考え。建設機械メーカーなどが保有する施工データを集約・活用するための「データ共有基盤」の整備に向け、建設業団体や建機・測量機器関連団体とともに検討する「スタディグループ」も始動させた。
ステージ2は、各現場で建機やダンプトラックの稼働データ、施工履歴データ、映像データなどをリアルタイムで集約・見える化し、施工の効率化や課題解消につなげる取り組み。ICT施工を従来の工種単体の効率化から、工事全体の生産性向上に進化させる狙いがある。
試行工事は2024年7月に初弾を選定し、現在までに北海道と東北、関東、中国、九州の5地方整備局・開発局の計15工事で実施。▽施工段取りの最適化▽ボトルネック把握・改善▽進捗状況などの把握による予実管理▽その他(注意喚起や教育)-の四つの観点で効果実証に取り組む。
ある工事ではダンプの稼働データから滞留を把握し、運搬経路を改善。土砂を積み込むバックホウの能力を上げダンプの待ち時間も減らした。別の工事では施工計画段階のシミュレーションでダンプの運搬経路を改善し、施工中も滞留状況を見て建機の台数や休憩時間を見直した。いずれも日当たり施工量や運搬の作業量を大幅に増加させ、工程短縮と延べ作業人員の削減を達成。待ち時間の別作業への有効活用や、休憩時間のフレックス化など副次的な効果も生まれている。
データ共有基盤のスタディグループは2月に設置した。民間は▽日本建設業連合会▽全国建設業協会▽日本建設機械施工協会▽日本測量機器工業会-の4団体が参加。まずは発注者が求める施工データを明確化し、受発注者間でさまざまな施工データを集約・活用するための共通ルールを作成する方向。25年度末までに検討成果をまとめる。民間事業者による施工データの連携を図るアプリ開発などを促す。