2024年に着工した建築物の床面積や住宅戸数が過去数十年で最低水準に低迷する中、トータルの工事費だけが上昇し続けている。国土交通省の建築着工統計調査によると、着工床面積が減少しているのに工事費予定額の合計値が増加する逆転現象が22~24年に3年続けて起きた。同調査から1平方メートル当たりの工事費予定額として工事単価を算出すると、この2年は年10%超の上昇が続く。背景には資材費や労務費の高騰があるが、その影響が実際の工事費として反映されてきた証左と言えそうだ。
24年に着工した住宅は79万2098戸で、リーマンショックが影響した09年以来15年ぶりに80万戸を割った。合計の床面積6087平方メートルはインターネット上で把握できる1983年以降で最低。民間非居住用建築物の着工床面積は3507平方メートルで、これも1980年以降で最低だった。
同調査では建築主が特定行政庁に提出する「建築工事届」を集計している。着工前に見積もられた工事費予定額の記載欄もある。コロナ禍で市場が冷え込んだ20年以降、工事費予定額の合計値は上昇が続く。22年は床面積が前年比2・3%減となる中、工事費予定額が1・9%増と逆転。23年も床面積が6・9%減で工事費予定額が6・8%増、24年も床面積が7・6%減で工事費予定額が2・4%増となった。
建設業者からの報告に基づく抽出調査となる建設工事受注動態統計調査では24年の元請受注高のうち建築工事が9・4%増だった。見かけ上は建築市場の好況がうかがえるが、着工床面積の減少という形で実質的な工事量がしぼむ傾向には拍車が掛かっている。
建築着工統計調査のデータを用途別・構造別に見ると、居住用・木造よりも非居住用・非木造の方が床面積の減少と工事費予定額の増加の乖離(かいり)の度合いが強く、過去5年で工事単価の上昇幅が大きくなる=グラフ参照。24年の工事単価は居住用が7・6%増、木造が8・1%増、非居住用が15・6%増、非木造が13・2%増。全体では10・8%増加した。
工事単価の上昇要因として国交省住宅局はハウスメーカーなどのヒアリングを踏まえ資材費や労務費の上昇、一戸建て住宅の省エネ化など付加価値向上の影響を指摘する。大規模工事を中心に着工後の工事費の増額も想定され、実際の建築コストはさらに上振れしている可能性が高い。