国交省/直轄工事で賃金・労働時間「見える化」、受注者側の理解得て試行を

2025年3月11日 行政・団体 [2面]

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 国土交通省が直轄工事で試行する方針を示した技能者の賃金や労働時間の実態把握について、受注者となる元請や下請への丁寧な説明と十分な理解を踏まえ試行に取り組むことを7日の有識者会議でほぼ了承した。元請団体を中心に、技能者を雇用する下請にもデータ提出を求める難しさや、試行のメリットを問う声も挙がった。試行の中で元請と下請のそれぞれに依頼する事項を明確にし、将来的に実現を目指す受注者側のメリットについても理解を得ていく必要がありそうだ。
 有識者会議「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の「建設生産・管理システム部会」(部会長・小澤一雅政策研究大学院大学教授)が7日開いた会合で、国交省が提示した試行の方向性について議論した。
 試行工事では受注者の元請と、技能者を雇用する下請に支払い賃金と労働時間、労務費の三つのデータを発注者に提出してもらい「見える化」する。各工事で実態把握の対象工種をあらかじめ決めた上で、雇用主の下請は賃金台帳に記載された技能者の賃金総額と総労働時間を発注者に直接提出。元請は下請に支払った労務費と、試行工事で技能者が実際に働いた作業時間を把握し提出する。
 この実態把握により企業単位では労働時間に対し賃金が、工事単位では作業時間に対し労務費が、適切に支払われているかどうか判断する材料になる。ただ下請の賃金開示には抵抗感が強いとの指摘もある。そこで試行では提出してもらう賃金を技能者個人ごとではなく全員の合算値とし、なおかつ元請を通さない提出方法とすることで下請に配慮する。
 小澤部会長は試行に当たって把握するデータの定義や提出主体を明確化し、受注者側に誤解が生まれないよう国交省に対応を要請。データ把握で何が明らかになり何が実現できるか、具体的なモデルケースを示すことで理解も深まると助言した。国交省は丁寧な説明により試行への協力に理解を得ていく考えを示した。
 このほか有識者からは、試行の開始以降も必要に応じ実施方法を改良すべきとの意見があった。今回の試行が建設業の生産性向上と働き方改革を実現する制度の設計につながる可能性を指摘し、受注者側へのメリット訴求に期待する声もあった。