電子銘板でやりがいアピール/CCUS活用も検討、建設業の魅力向上へ普及に弾み

2025年3月17日 行政・団体 [1面]

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 建設現場で働く技術者・技能者のやりがいを高めようと、社会インフラなどの建設プロジェクトに携わった人たちの功績を、電子化した工事銘板で伝える取り組みが広がってきた。現地の記念碑や銘板などに付けた2次元コードから工事関係者名簿を閲覧できたり、事業者のホームページ(HP)で完成した構造物の工事関係者らを紹介したりするなど、ネットを介して誰もが手軽に見られるよう工夫を凝らす。建設キャリアアップシステム(CCUS)との連携を模索する動きもあり、電子銘板の普及に弾みが付きそうだ。=2面に関連記事
 ダムやトンネル、橋梁など大規模な土木構造物を中心に、事業者や施工者らの技術者名などを刻銘した銘板が現地に設置されてきた。最近は設置対象構造物の拡大や、記載範囲を下請企業の技能者にまで広げるケースも見られる。
 建設事業着手から40年超を経て、1年前に完成した阿蘇立野ダム。国土交通省九州地方整備局が熊本県南阿蘇村と大津町で建設事業を進めてきた国内最大規模かつ1級河川で初の洪水調節専用ダム(流水型ダム)であり、多くの関係者が事業に携わった。
 現地には工事概要を紹介する案内板と「立野ダム建設工事 従事者」と記した金属製の銘板を設置。銘板には九州整備局の立野ダム工事事務所、本体工事を担当した西松建設・安藤ハザマ・青木あすなろ建設JVの担当者名と主要協力会社名が記されているほか、ダム完成に尽力した事業関係者名簿を読み込める2次元コードが付いている。
 九州整備局熊本河川国道事務所の担当者によると、「本省や業界関係者などで構成する産官学の『建設現場で働く人々の誇り・魅力・やりがい検討委員会』で示された工事銘板による技術情報の発信の在り方に基づき、各現場で取り組みが進められている」と説明。立野ダムでの銘板設置についても同検討委の提言内容などを踏まえて検討し、できるだけ多くの工事関係者の名前が閲覧できるよう2次元コードを活用することにしたという。
 完成時の西松建設JVの岩川真一所長(現鳥海ダムJV工事事務所長)は「銘板設置を完成間近に打診され苦労したが、施工者、協力業者を含めて比較的長期に工事に携わった関係者を中心に600人程度の名簿を作成し、2次元コードで電子銘板としてアップした」と振り返る。
 人数が多いので名簿への掲載は五十音順で確認しやすくした。名前のチェックや所属企業への登録確認など、手間も掛かり、どこまで名簿に載せるかの判断も難しかったが、「どんな形でも自分の名前が記録されたものが永続的に残るのは大きな喜びになる」と岩川氏。完成式典には協力業者も同席し、銘板を撮影している人たちも多かったという。
 電子銘板の取り組みを後押しする機運も高まりを見せる。CCUSに登録・蓄積されたデータを活用し、電子銘板を効率よく作成できる仕組みの具体化に向け、運営主体である建設業振興基金が検討に乗り出す。
 振興基金の谷脇暁理事長は「技能者のやりがいと建設業の魅力アップを後押しする電子銘板の整備と合わせ、CCUSの普及促進とメリット実感につなげたい」と意気込みを語る。まずはモデル事業として試行導入しながら仕組みを構築したい考えだ。