大人気ギャグ漫画「クレヨンしんちゃん」が連載開始から今年で35周年を迎える。主人公・野原しんのすけが巻き起こすドタバタ劇が面白く、関連書籍の累計発行部数は1億4800万部に上る▼物語の舞台である埼玉県春日部市には深さ50メートル以上の地下トンネルで雨水をためる首都圏外郭放水路がある。完成は2006年。15年の台風で鬼怒川が決壊した際は1900万トン超の雨水を貯留して河川に流し、洪水から地域と人々を守った▼18年度に民間運営の見学ツアーが始まり、これまでに6万人以上が参加している。国土交通省は観光しながら防災減災を深く学べる防災ツーリズムを始動。危機意識を持ち主体的に行動する「災害の自分事化」の定着を狙う▼取り組みの一環で長さ6・3キロの地下トンネルのほぼ真ん中に位置する第3立坑内を探検できるコースも新設された。専門知識を持ったコンシェルジュが施設の役割や災害の脅威を伝えてくれる▼放水路のPR施設「龍Q館」へは市のコミュニティーバスを利用してもアクセスできる。車内に〈しんちゃん〉の声で流れる案内を聞き、防災ツーリズムの拠点を訪れるのもいい。