建設キャリアアップシステム(CCUS)の収支見通しを含めた中期的な運営の方向性が、官民双方の関係者間でまとまった。CCUS開始当初の赤字がかさんで運営主体の建設業振興基金(振興基金)に生じた約53億円の累積欠損を2025年度以降の一定期間で解消する方向を示す。建設業団体側は25年度に始まる次期システムへの更新作業でコストが想定以上に上振れすることがないようくぎを刺す。今後は単年度の黒字を着実に確保しながら、関係者の合意を踏まえ欠損への充当などを毎年度判断する手続きを取る方針で、CCUSの安定的な運営に万全を期す。
CCUS運営協議会(会長=平田研国土交通省不動産・建設経済局長)が東京都内で19日に開いた総会=写真=で、振興基金が25年度から5年程度を対象期間とした「CCUSの中期的な事業運営のための指針」の案を説明し了承を得た。
新たな指針は、収入の安定確保を見込める登録技能者・事業者数や就業履歴数の取り組み目標を設定する現行の「低位推計」の代わりになる指標として定める。
新規の技能者・事業者登録数は少しずつ減少すると想定し、30年度に登録技能者は231万人、一人親方を除く登録事業者は19・4万社と予測。就業履歴数は25年度に1億1200万件、26年度以降は年1億2000万件を見込む。
システム運営にかかる支出は物価・人件費の上昇を加味する。システム更新は5~10年程度のスパンで必要となるため、次期システムのさらに先の更新を見据えた金額の積み立ても25年度に始める。
日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)など建設業団体側は、システム開発費に追加の出えん金を各団体が負担した過去の例を繰り返さないよう念を押した。
振興基金はシステム更新費として積み立てた約47億円で収まると想定。現在は複数のベンダーの提案書を審査中で、4月以降に契約先を決定する。システム開発の不確実性も念頭に置きながら、発注者支援業務も活用し専門家も入れた検討体制を敷いていることに理解を求めた。
指針ではシステム更新を着実に実施していくことを前提に、技能者の能力向上の促進などの観点でさらなる担い手の確保・育成につながる事業の実施を検討していく方針も掲げた。