松尾建設/唐津営業所新社屋が完成、自己治癒コンクリなど環境配慮技術を随所に導入

2025年3月21日 工事・計画 [17面]

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 松尾建設(佐賀市、松尾哲吾社長)が佐賀県唐津市東町で建設を進めていた同社唐津営業所の新社屋が完成した。CLT(直交集成板)のプレハブ工法でZEB認証を取得。自己治癒型のコンクリートを九州の建築物で初めて採用するなど環境配慮技術を随所に導入した。工期短縮効果なども含めると同規模の一般的な建築物を建てるのに比べ二酸化炭素(CO2)排出量は約2割の削減を見込む。
 老朽化した営業所社屋を敷地内で建て替えた。規模は木造平屋105平方メートル。昨年8月末~11月末に新築工事を進め、既存施設解体などを経て18日に落成式を開き、営業開始した。設計・施工は自社で手掛けた。
 同社も出資するMEC Industry(鹿児島県湧水町)が開発した高い強度と耐震性能・耐火性能を持つ国産材CLTのプレハブ工法「MOKUWELL HOUSE」で施工。工場製作し現場に据え付けることにより、組み立て工程を1日で終えるなど工期短縮を図った。CLTは天井やOAフロアにも使い、木材量の約7割を占める。
 木造ZEB対応建築物として高性能断熱材やLow-E複層ガラス、消費電力の少ない照明器具の採用、太陽光パネルよる創エネルギーの導入などにより、1次エネルギー消費量ゼロの建物を目指した。
 「BasiliskHA自己治癒コンクリート」は配合した特殊なバクテリアがひび割れに反応して活性化し、ひびを自動的に埋める。補修作業を減らし長寿命化を図り、CO2の排出を削減できる。今回は建物基礎にプレキャストコンクリート(PC)で使用した。駐車場舗道の床版にはセメント製造過程で排出されたCO2をリサイクルしてコンクリートに注入する「カーボンキュアコンクリート」を九州で初めて採用した。
 コンクリートはいずれも會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)の商品。PCは松尾建設グループの翠興産(佐賀県伊万里市)の工場で製作した。同社は今後、カーボンキュアコンクリートの製造に向けた設備投資を予定している。
 外気と屋内空気を同圧にし、ガス交換膜を経由して酸素とCO2を交換することで外気を居室に導入しない「拡散換気設備」を導入。太陽光発電した電力を建物で使用し、余剰電力は電気自動車(EV)や蓄電池に蓄えるV2Hシステムも導入した。
 落成式で松尾社長は「今後の豊かな社会を創造するために広めたい技術を導入した」と述べ、環境配慮技術のさらなる普及に意欲を示した。