選ばれる産業へ・1/東京地区生コンクリート協同組合理事長・森秀樹氏

2025年3月24日 行政・団体 [2面]

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 コストアップや人材不足への対応など、大きな転換期にある生コンクリート業界。日刊建設工業新聞は東京地区生コンクリート協同組合、埼玉中央生コン協同組合、神奈川生コンクリート協同組合、千葉県生コンクリート工業組合の各理事長にインタビュー取材し、各エリアの市場動向や事業発展への課題などを聞いた。持続可能な生コン業界への転換を急ぐ各組合の取り組みを紹介する。

 ◇若手人材獲得へ大きな一歩
 東京地区の2024年度の生コン需要は、255万立方メートルで落ち着きそうだ。需要は底堅く、次年度の需要を270万立方メートルと見ているが、大型の工事案件で工期遅れが発生しないか懸念している。
 社会貢献として生コンを継続的に供給することが使命だが、骨材の安定供給が続くか不安だ。骨材業者の大多数が中小企業で、運搬するトラック運転手や後継者の不足、プラントの老朽化などの課題を抱える。万が一廃業などが増えれば影響が非常に大きい。骨材の値上げにはできる限り応えなければならない。
 東京地区では、軽量骨材不足が大きな問題になっている。生産しているのが1社だけという状況の中で、都内の再開発工事の工期遅れなどによって需要が集中しているのが原因だ。月に約3万立方メートル必要なところ、約1万立方メートルしか用意できない状況が続いている。最近は他の骨材を使用して設計をしてもらえるようになったが、28年までこの状況が続くと見ている。
 こうした問題への対応とともに、出荷ベース契約の定着も進める。東京は他地域に比べ工期の長い案件が多く、諸資材の値上げを適宜生コン価格に転嫁する必要がある。4月1日から生コン価格を1立方メートル当たり3000円引き上げるが、旧契約価格との差額負担を繰り返す余裕はなく、過去において原価が大きく変動しない中で築いてきた商慣習も変革する時期に来ていると感じている。
 残コン・戻りコンが減少しないことも課題だ。廃棄物処理費用の上昇に加え、処理施設の不足による受け入れ停止も起こりそうな状況になっている。出荷量の約3%を占める残コン・戻りコンをゼロにするため、1立方メートル当たり1万円の有償化も行ったが状況は変わらず、4月1日からは3万5000円に値上げする。
 生コン業界を若い人の就職先として選択してもらえるようにすることも喫緊の課題だ。東京協組では、4月1日から完全週休2日制を導入する。東京都生コンクリート工業組合が青年部を設立するのも、若手人材獲得の大きな一歩になるだろう。全国生コンクリート工業組合連合会主催のコンクリート甲子園などを通じ、PR活動の拡大も図る。コンクリートに触れる機会を創出するとともに、社会貢献も行っている業界であることをもっと広く周知したい。東京は就職の選択肢が多いので地方からも人材を広く求めることも必要だ。