江戸時代前期に日本各地を修行し、木肌とノミ痕を生かした神仏像を残した円空。特別展「魂を込めた 円空仏-飛騨・千光寺を中心にして-」が今月30日まで三井記念美術館(東京都中央区)で開かれている▼荒々しくも温かみのある木彫像を眺めていると、自然と心が穏やかになる。人気マンガで認知度が高まった「両面宿儺(すくな)坐像」が見どころの一つ。憤怒の中にも慈悲がにじみ出てくる姿に目を奪われた▼山林修行僧の円空は庶民救済を目的に愛知、岐阜を中心に関東、北陸から北海道までを巡り、12万体の仏像を刻もうと誓願を立てた。30歳ごろから彫り始めたという円空仏は当初、古典的な造りで丁寧に彫られていたが次第に簡素な仏像に。作風はたくさん彫ることで多くの人たちを救おうとした願いの表れだろう▼昨年の訪日外国人数は歴史的な円安の影響などで過去最多を更新。世界的ヒットのドラマ「SHOGUN将軍」で注目を集める岐阜県では、千光寺のある高山市も観光ハブとして一段とにぎわいを見せているようだ▼今も昔も人々の苦しみを和らげる円空仏。平穏への願いを多くの人と共有したい。