◇設計=三菱地所設計、施工=大成建設
東京・神田エリアの新たなシンボルタワーとなる「大手町ゲートビルディング」の建設工事が春から最盛期を迎える。敷地南側に面した日本橋川や真下を走る首都高速道路を挟んで国内を代表するビジネス街、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)地区との結節点に位置し、東側では地下鉄の東京メトロ丸ノ内線が通るなど都心ならではの制約が多い。施工を担う大成建設はインフラ管理者らと連携し、安全確保を最優先した難工事に挑んでいる。
プロジェクトは三菱地所が「(仮称)内神田一丁目計画」として建設するS造26階建て高層オフィスビル。ガラスカーテンウオールの外壁は「日本橋川のきらめき」をイメージしている。3層吹き抜けの開放感あるオフィスエントランスは天然の木材を多く使用し品格と温かみのある空間を演出。オフィスフロアは約2000平方メートルの無柱空間で多様な働き方に合わせたレイアウトが可能となる。設計は三菱地所設計が担当した。
工事は2024年5月に鉄骨建て方に着手し、同12月19日に上棟した。大成建設によると、3月20日時点の進捗率は約60%。仕上げとなる内外装工事は春に本格着手し、作業は最盛期を迎える。現場に入場する職人の人数は建て方時点で1日当たり最大約350人だったが、これから同約800~1000人に増える見込みだという。
現場は敷地南側の真下を首都高都心環状線、北側の真下を都道402号が通り、歩行者も絶え間なく行き交う。そのため「飛来・落下・第三者災害防止対策に細心の注意を払っている」(杉村隆広統括所長)。大成建設は首都高速道路会社と協議の上、南側外壁に採用したプレストレストコンクリート(PC)のカーテンウオールをつり上げる際、大型クレーンに補助ワイヤを付けて補強した。
外壁工事では、飛来・落下防止用のネットをいったんセットバックした場所に張り替え、カーテンウオール材をつり出して付ける地道な作業を繰り返した。大型クレーンだけでなく小型の重機にもワイヤを付けて転倒、落下防止に万全を期した。
鉄骨建て方工事の期間中、プロジェクトの一環として、敷地内外では日本橋川での防災船着き場整備や大丸有地区との回遊性を高める人道橋の建設、大丸有地区から地域冷暖房を引き込むためのシールド工事といった、土木工事3件も並行して進められてきた。
「本来なら危険作業である鉄骨建て方は日中に場内で作業するのが鉄則」と杉村氏。ただ敷地内では建築工事の施工ヤードが確保できず、警察との協議の結果、夜8時から朝5時までの夜間に限り5車線が通る都道402号の3車線を使ってクレーンやトレーラー、鉄骨を並べるヤードを確保。上棟までの間、一般車両が通る横で作業を進めた。
敷地東側には地下鉄の丸ノ内線も通っている。工事では「数ミリの誤差が出るだけで函体に影響を及ぼすリスクがある」と澤田大介作業所長。あらかじめ大成建設の本社技術部で解析してから剛性の高い山留めを採用したり、安全な場所で重量物を扱ったりした。施工中も東京メトロから函体が沈下、隆起していないかどうか定期的に計測確認し、施工計画に反映させた。
現場では24年度から建設業に適用された時間外労働の上限規制を順守するための働き方改革も求められる。そのためリモート朝礼を取り入れ移動にかかる時間を削減。クラウド型ビジネスチャットツールのLINEWORKS(ラインワークス)も活用し、現場管理を効率化している。
快適な作業環境も重視し、冷暖房を完備したユニットハウス型の休憩所を整備した。1時間の昼休みを有効に利用できるよう、売店も設けうどんやカレーライスなど軽食も提供。看護師も常駐している。高齢の職人も多い中、杉村氏は「場内完結で済むストレスフリーの環境整備に努めた」と話す。
26年夏ごろの竣工を目指し、工事は最盛期を迎える。杉村氏は「災害・事故を起こさないことが第一だ。現場で働く全員が携わって良かったと思えるようにしたい」と述べ、澤田氏は「所長を務める初の現場。工期までにしっかりとした形で完成させたい」と意気込む。
□工事概要□
△件名=(仮称)内神田一丁目計画
△発注者=三菱地所
△建設地=東京都千代田区内神田1の1(敷地面積5106m2)
△構造・規模=地下SRC一部S造地上S造・地下3階地上26階建て塔屋2階延べ8万5297m2(建築面積3280m2)
△設計=三菱地所設計
△施工=大成建設
△工期=2021年12月~26年夏ごろ