小学校の教科書にも載る「さよならの学校」は、白い杯のような花を咲かせる泰山木(タイサンボク)を巡る祖父と孫の物語。木の根元に毎年プレゼントを置いてくれた祖父は、亡くなる前にその泰山木をプレゼントしたいと話す▼昔の記憶を紡ぎながら孫の祖父への思いが伝わってくる。小学生が書いた感想文を読ませてもらうと、家族や仲間をいたわり、思い出を大切にしたいという気持ちがあふれていた▼取材先でも異動や退職であいさつに回る方々を見かけるようになってきた。一緒に仕事をしてきた仲間として「ありがとう」「お元気で」と相手を思いやる言葉に、こちらも温かい気持ちになる▼国土交通省と全日本トラック協会がまとめた引っ越しの予約状況によると、29~31日が非常に混雑する。同省は2月前半から分散への協力を呼び掛けてきたが、さまざまな事情・事由から応じにくい人も多かろう▼泰山木の苗木は1メートルくらいの背丈が多く、贈り物として手渡すには難がある。それなら「前途洋々」の花言葉にあやかり、赴任先での健康と活躍を心から願いたい。これまで十分に伝えられなかった感謝を込めて。