◇「地域の守り手」維持へ
東北6県や仙台市は工事・関連業務の入札契約制度を見直し、建設業の健全な競争環境の構築や働き方改革の推進などに取り組んでいる。2025年度の制度改正を見ると総合評価方式の見直しや地域要件の緩和・強化などが目立つ。事業量の減少や受注競争の激化を背景に、地域建設会社を取り巻く経営環境は厳しさを増す。「地域の守り手」としての役割を今後も果たし続ける上で、公共発注機関の対応は不可欠といえる。
青森県は4月以降に入札を公告する案件で、ICT活用証明書の発行対象工事を全工種(港湾工事を含む)に拡大する。「週休2日確保工事」の証明書発行要件も完全週休2日や月単位の4週8休などに変更。県土整備部の発注工事は元請に施工体制を自己点検するよう求めていく。
岩手県は新年度のスタートを機に、総合評価方式で「チャレンジ型」を試行導入する。技術的工夫の余地が小さい工事を対象に、工事成績評定や施工経験、配置予定技術者の工事成績評定などの審査項目を減らし受発注者の負担を軽減する。建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用や「ユースエールの認定」を評価項目に追加。国の施策や「いわて建設業振興中期プラン2023」などに基づき、経営や若者育成、雇用管理に優れた企業を評価していく。
秋田県は一般土木A等級に当たる土工量3000立方メートル以上の土工を原則発注者指定型のICT施工実践活用モデル工事で発注する。舗装や一般土木A等級の舗装(路盤工)は3000平方メートル以上がモデル工事の対象になる。土工と舗装工以外のICT施工実践工種は引き続き規模の大きい案件に指定型を適用する。
宮城県は新たな入札方式として「一抜け入札方式」を試行する。規模や条件が同程度の複数工事・業務で予定価格が高い順に開札し、上位工事の落札者が次回以降の入札に参加できなくなる仕組みだ。「地域ブロック限定型」の工事は、適用上限を1億円から1・5億円に引き上げるとともに、入札条件を満たす企業数の要件を30者以上から20者以上に緩和する。業務は総合評価方式の評価内容を見直し、企業と技術者評価の対象期間を「過去2年」から「過去5年」に拡大する。
山形県は昨年7月に総合評価方式のガイドラインを一部変更した。これまでICTの「全面的な活用」に加点していたが、新たに施工者希望型の2プロセス以上で使用する「部分的な活用」も加点対象にした。担い手確保の観点から、土木一式工事に限定していた「若手女性技術者評価型」の適用範囲も全工種に拡大している。
福島県は品質と技術力向上を目的に、総合評価方式の「工事成績」評定区分を改める。これまで一律に加点していた80点以上の工事成績を、新たに「80点以上85点未満」と「85点以上」の2区分に変更。評価基準として85点以上の場合、標準型・簡易型は1・5点、特別簡易型・地域密着型では0・75点を加点し、80点以上85点未満合はそれぞれ1・0点、0・5点を加点する。
仙台市は災害時の迅速な初動対応を目的に、総合評価方式の評価項目「協定に基づく防災訓練実績」で「複数実績あり」の評価基準を設ける。防災訓練への継続的な取り組みを促し防災力を強化する狙いがある。
各自治体の制度改定は施工者の技術力向上や担い手・人材確保、DXの活用推進、地域内の公平な受注機会の確保などが基軸になっている。工事と業務で改正公共工事品質確保促進法に基づく新しい運用指針の適用が始まる。発注者には「多様な入札契約方式の選択・活用」など同法の趣旨をより理解し適切な対応が求められる。