国土交通省は第3次担い手3法の趣旨を踏まえ、公共工事で適正な労務費を確保する目的でダンピング対策を強化する。元請が提出する入札金額内訳書で労務費の明示を新たに求めるのに合わせ、現行の低入札価格調査制度・最低制限価格制度にプラスして「労務費ダンピング調査(仮称)」を導入する方針だ。地方自治体を含む公共工事全体での展開を視野に、発注者向けに調査方法などの指針を用意。発注者の積算に照らし、見積もられた労務費が適正かどうかを判断できるよう、直轄工事などの積算システムの改修も見込む。=2面に関連記事
26日に開いた中央建設業審議会(中建審)の「労務費に関する基準(標準労務費)」に関するワーキンググループで、公共工事にフォーカスして労務費・賃金の確保・行き渡り担保策を提案した。入札契約段階の「入り口」でダンピング対策を強化。実際に支払う「出口」の段階で建設Gメンの運用や、契約当事者間で賃金支払いを約束する「コミットメント」の活用、直轄工事で試行する賃金支払いの確認などに当たる。
労務費の見積もり規制の年内施行と同時に、改正公共工事入札契約適正化法(入契法)で建設業者に労務費や必要経費を記載した入札金額内訳書の提出を義務化する。労務費ダンピング調査では、内訳明示された労務費が著しく低いかどうか発注者として確認。労務費額が一定水準を下回り、省人化による効率化などの正当な理由がない場合、建設Gメンに通報する流れを想定する。
現状では発注者の積算システムが工種ごとの労務費内訳まで見える形となっていない。そこで労務費を把握できるよう積算システムを改修し、確認を簡素化する方向で検討する。最終的には材工分離の見積もりが定着することで入札・契約時に労務費が可視化され、入札参加者が自ら実態に即して積算単価や工期を算定するような絵姿を描く。
自治体発注工事を念頭に、適正な予定価格の設定も徹底する。設計金額の一部を切り下げて予定価格にする「歩切り」の実態をフォローアップする考え。資材単価に不透明な乗率を設定する「単価歩切り」や設計など業務発注も含めた調査に乗り出す。直轄工事と比べて発注ロットが小さいことや地域特有の事情から、独自の歩掛かりを設定している自治体の調査にも着手。予定価格の正確な算出につながる好事例を周知、水平展開する。