PFI事業者、円滑な選定へ対策進む/予定価格再設定や方針・指針見直し

2025年3月28日 行政・団体 [1面]

文字サイズ

 PFIの事業者選定を巡る発注者や内閣府の取り組みが活発になってきた。事業者選定が順調に進む事業が多くある一方、2024年度は国の庁舎、地方自治体の施設、大学施設などで選定が難航した事業が少なくない。要因はさまざまだが参加者なし、参加表明の辞退も相次いだ。事業の頓挫、遅れは公共サービスの提供が遅れ、計画の見直しや再募集に伴って行政コストや職員負担が増えるだけに対応が進みつつある。
 「事業の範囲、夜間規制などの施工条件を受け入れてもらえなかったようだ。単価に差もあったかもしれない」。国のある発注機関の担当者は、1者だけが参加表明した後に辞退した事業についてそう話した。斎場整備の事業者選定に総合評価一般競争入札を適用し、すべての参加者が辞退したある自治体は、PFIの事業予定価格を約15%上積みして再公告した。PFIの事業方式も変更した。
 スポーツ施設の整備・運営を計画した別の自治体は、公募型プロポーザルを全参加者が辞退。4月の再公示に向けて価格を確認する段階などの最終調整に入った。国は24年12月に国立劇場(東京都千代田区)の整備計画と事業費を改めた。
 2月に民間活用推進方針を見直した川崎市。通常範囲のインフレ・デフレは「民間事業者のリスク」としつつ、通常範囲を超えた変動は市との適切なリスク分担で「事業継続が可能になる」とした。官民連携の分野で物価高騰の影響が大きく、リスク分担の考え方を整理した。
 24年11月にPFIガイドラインを改定した横浜市は、予定価格の算定日を「入札公告日に近づける」と明記。予定価格の算定が公告前の導入可能性調査の時点などだった場合、入札時の工事価格との差が開き、不調・不落になりやすいことが背景にある。
 入札の新しい仕組みで事業者選定にこぎ着けた発注機関もある。国土交通省関東地方整備局は、電線共同溝の入札不調・不落対策として一般競争入札(総合評価方式)に見積活用方式を適用。一部工種の見積書提出を入札者に求め、予定価格に反映した。参加者が辞退した過去の別事業を踏まえ、市場調査による参加意欲の確認、見積活用が望ましい工種の聞き取り、近隣で工事した建設会社へのヒアリングを行った。
 内閣府は民間資金等活用事業推進室が予定価格の設定やサービス対価の改定に関し、自治体の取り組みを把握しつつ、関係ガイドラインの見直しを検討している。既存契約の変更に関する議論も続ける。「(受発注者が)お互い不幸になってはいけない」(担当者)として実態を見た対応を検討していく。