主要な電気・情報通信設備工事13社の今春(4月)入社する新卒採用数(短大・大学卒、大学院修了)は合計1193人になる見込みだ。前年実績比では192人増加。100人以上を確保したのは5社、目標値を満たしたのは公表した10社中4社だった。技術系は公表した12社で合計860人(前年比99人増)となる見通しだ。各社は人手不足や事業拡大に備えて技術系人材の積極採用を続ける。しかし、工学系学生が減少する中で他業界との競争が激しい新卒採用では、求人に興味を持つ母集団の形成に苦戦。各社は中途採用に活路を見いだす。
アンケートは日刊建設工業新聞社が1~3月に実施した。今春の新卒採用で100人以上確保するのは▽きんでん198人(24年度実績比21人増)▽九電工158人(34人増)▽トーエネック113人(17人増)▽ミライト・ワン112人(65人増)▽関電工111人(19人増)-の5社。前年実績から採用数を増やしたのは10社だった。
大きく増やしたミライト・ワンは24年度から採用専門部署を設け、SNS展開や短期インターンシップの強化に取り組む。来春(26年4月)の採用計画数は10社が公表した。「増やす」とした企業は4社で、日本コムシスや住友電設は事業拡大を理由に挙げた。
一方、「採用市況から難しい」(富士電機E&C)として「横ばい」とする企業も少なくない。各社は応募者を増やそうと、SNSやCMを駆使して認知度向上を図る。
待遇面では「採用競争力を強化する」(エクシオグループなど)として、25年度は4社が初任給の引き上げに踏み切った。奨学金返還支援制度(日本電設工業など)や入社後の勤務地保証制度(住友電設など)といった福利厚生の拡充も活発だ。多岐にわたる採用戦略に「効果を見極めにくい」(ユアテック)といった指摘もある。
技術者の確保へ、中途採用の重要性が高まっている。24年度は、全13社が622人(前年度実績比250人増)と大幅な増加を見込む。25年度は6社が増やす方針。即戦力として「資格や前職での知識・経験」(ユアテックなど)に加え、「協調性やリーダーシップなどチームで働く上で必要な能力」(東芝プラントシステムなど)といった付加価値を期待する声も多い。
業界全体では新卒を含め増員が進んでいるものの、個別には想定ほど増やせていない実情がうかがえる。
電工系5社の高専卒・高卒採用数を比較すると、きんでん254人(前年度比13人増)、九電工240人(35人増)、関電工230人(9人減)と3社が200人以上の採用を維持。トーエネックは115人(13人減)、ユアテックは66人(8人減)となった。両社と関電工の3社は目標人数に達しなかった。