政府は28日、2026年度から30年度までの5年間を計画期間とする国土強靱化実施中期計画の素案を公表した。各省庁からの意見を踏まえ324施策を列挙。このうち予防保全型インフラメンテナンスへの転換、建築物の耐震化など116施策を重点的に推進する。事業規模は資材費や人件費の上昇を予算編成過程で適切に反映させると明記したものの、金額の明示は見送った。
同日に有識者でつくる「国土強靱化推進会議」の第13回会合を東京都内で開き=写真、素案を示した。今後、素案に対する一般意見を4月上旬に募り、6月ごろに開く次回会合で計画案を示す見通し。同推進会議で計画案が承認されると、石破茂首相を本部長とする国土強靱化推進本部に提出し、閣議決定する。法定計画として名称は「第1次国土強靱化実施中期計画」とする。
素案では施策を▽防災インフラの整備・管理▽ライフラインの強靱化▽デジタル等新技術の活用▽官民連携強化▽地域防災力強化-の5分野に整理。324施策のうち重点推進施策とした116施策については、南海トラフ地震が今後30年以内に起きる確率が80%程度であることを踏まえ、20~30年先を目標に設定。計画実施に当たっては「財源確保策の具体的な検討を開始する」とも明記した。
重点推進施策のうち、防災インフラの整備・管理では、必要な防災インフラを着実に整備するとともに、AIやドローンなど新技術の活用しインフラ管理の高度化、老朽化対策に取り組む。主な施策として「洪水・内水ハザードマップ等の水災害リスク情報の充実」「関係省庁の枠を越えた流域治水対策等の推進」「発災後の残存リスクの管理」など28施策を盛り込んだ。
ライフライン強靱化では交通、上下水道、通信・電力などのライフライン機能の維持を図るため、点検の着実な実施や急所となる施設の耐災害性を強化する。具体的には埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を踏まえた上下水道の戦略的維持管理・更新や、港湾施設の耐震化・耐波性能強化など107施策に取り組む。
デジタル技術活用についてはテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の機能強化や自動施工技術を活用した建設現場の省人化など55施策を提示。官民連携強化の分野は、住宅建築物の耐震化や立地適正化計画を通じた災害に強い市街地形成など直接的に人命につながる14施策を掲げた。
地域防災力強化では能登半島地震の教訓から公立学校の耐震性強化、避難所への分散自立型再エネ設備の導入促進など17施策を進める。