創業220年超の歴史で培ってきた技術力を生かし、誠実にものづくりと向き合いながら「安全と品質は絶対に譲れない」という原点回帰の方針を示す。業績の回復基調をより確かなものとするため、適正なコストや工期の確保に徹底してこだわる。2年目を迎える3カ年中期経営計画の目標達成を目指す。
--就任の抱負を。
「職責の重さに身が引き締まる思いだ。中期経営計画をきちんと実現することがミッションになる。業績は回復基調にあるが満足できるところには達していない。221年の歴史がある当社の強みは時々の顧客ニーズに応え、満足していただける誠実なものづくりを積み重ねて信頼を得てきたことだ。その流れは絶対になくしてはいけない。再び原点回帰して本業である建設事業を強化し、幹が太く根っこの強い会社にする」
--原点回帰による具体的な取り組みは。
「受注判断を厳格にしてから、顧客にはきちんとした施工計画に基づく見積もりを伝える。その上で4週8閉所+αの適正工期を確保するため、コストや工期のリスクをすべて提示する。この方針を緩めることなく貫いていく」
--建設事業で注視、注力する分野は。
「土木を中心とする公共投資は国土強靱化対策やインフラの維持管理、老朽化対策などがある。建築はリニューアルやリノベーション、AIの普及などに対応したデータセンター(DC)、電気自動車(EV)のバッテリー工場などが増えるとみている。国内外の需要や発注者の考えをきちんと見極めていく。市場が好調な今だからこそ、環境が変わることに準備をしていかないといけない」
--海外事業は。
「拠点を集中、自立化する国を選定し展開していくことが基本になる。引き続きシンガポールやインドネシア、ベトナム、メキシコも含めた北米などに注力する」
--中長期的な課題は。
「コロナ禍前の2019年に策定した30年を見据えた長期ビジョンの目標達成には厳しい道筋だ。必要に応じM&A(企業合併・買収)や緩やかなアライアンスを検討する。地方には後継者確保に悩む建設会社もある。開発事業やエンジニアリング事業ももう少し大きくできる」
--人的資本投資は。
「対話をしながら社員一人一人に寄り添い、前向きに仕事ができる環境を構築する。建設だけでなく営業や技術開発などさまざまな現場に足を運び、実際にやっていることや空気感を知りたい。人事制度も見直し、頑張った人がよりきちんと評価され実感できる仕組みを作っていかないといけない」。
(4月1日就任予定)
(しんむら・たつや)1984年早稲田大学理工学部卒、清水建設入社。常務執行役員名古屋支店長、専務執行役員東京支店長、副社長執行役員建築総本部長などを経て2024年6月から代表取締役副社長。座右の銘は「失意泰然、得意冷然」。常に謙虚に冷静沈着でいる心構えを大切にする。趣味はミュージカル鑑賞。石川県出身、63歳。