建設業に対する時間外労働の罰則付き上限規制の適用から1日で1年になる。建設関係団体の調査によると、労働時間の削減に向けた週休2日が一段と浸透し、厚生労働省の統計でも総実労働時間が減少していた。ただ民間工事が多くを占める建築分野の課題が浮き彫りになり、上限規制の課題に対する指摘も出てきている。=各面に関連記事
厚労省がまとめた2024年の毎月勤労統計調査(事業所規模5人以上)によると、建設業の月間実労働時間は、総実労働時間が前年比1・7%減、所定外労働時間は7・6%減となった。減少は総実労働時間が2年ぶり、所定外労働時間は2年連続。同省は関係性を分析していないものの、減少の要因の一つには上限規制の適用があるとみられる。
日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が会員企業に実施した調査では、24年度上期(4~9月)に4週8閉所以上を実現した現場の割合は61・1%と、前年同期を11・7ポイント上回った。ただ土木・建築別は、土木が73・0%(10・4ポイント上昇)に対し、建築は49・3%(13・7ポイント上昇)と差が開き、民間工事の多い建築分野が依然課題となっていることが分かった。
24年9月、日建連、全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)、建設産業専門団体連合会(建専連)の4団体と国土交通省とで行われた意見交換では、同3月改定の「工期に関する基準」と、同6月成立の第3次担い手3法を受け、民間発注者に対する適切な指導を求める意見が出た。4団体は同11月、不動産協会(不動協)に現場の土日閉所運動の展開に当たっての協力を申し入れ、土日閉所可能な工期設定なども求めた。
不動協への働き方改革の協力要望は初めて。4団体は、24年度に開始した「目指せ!建設現場 土日一斉閉所」運動への協力を要請した。この運動は25年度から日本空調衛生工事業協会(日空衛)、日本電設工業協会(電設協)が加わり、6団体で強力に推進する。
第3次担い手3法を踏まえ、週休2日や適正工期の確保を巡る国交省の対応も進展している。直轄土木工事には、25年度から土日休みの完全週休2日に対応した労務費や経費の新しい補正係数を適用する。政府が2月に公表した新しい公共工事設計労務単価は、上限規制に対応するために必要な費用が引き続き反映された。
上限規制や働き方改革は、今国会でも質疑が行われており、3月14日の衆院国土交通委員会では地域の建設業協会の調査結果から「公共工事は工期に猶予をもらっているが民間はタイト」(赤羽一嘉元国交相)と指摘があった。厚労省の担当者は、都道府県ごとの「働き方改革推進支援センター」の機能や関係助成金による建設会社の支援とともに、助言、指導を行っていく考えを示した。
同委員会では、収入を増やすために働く時間を増やしたい労働者を巡るやりとりもあった。それでも労働時間の削減や週休2日の定着は、処遇の改善や若い担い手の確保・定着に影響するだけに、上限規制の適用2年目も受発注者双方の対応が活発になりそうだ。