シンガポールと五洋建設-60年の歩みと戦略・2/最盛期迎える大型病院建築

2025年4月7日 シンガポールと五洋建設-60年のあゆみと戦略 [3面]

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 五洋建設はこれまでシンガポールの陸上、海上で多岐にわたる土木・建築工事を担ってきた。現在も多くの工事が進行中。最盛期を迎えているのが建築工事の「ECC&NDCS」、土木工事の「N105」だ。
 ECC&NDCSは、エレクティブケアセンター(ECC)とナショナルデンタルセンターシンガポール(NDCS)で構成する大型病院建築工事(発注・シンガポール保健省〈MOH〉)。ECCはシンガポール総合病院で行われている手術や治療のうち、緊急性の低い手術や治療を行う施設。NDCSは歯科治療室だけでなく、歯科医の教育を行うための施設や先進の歯科治療装置などを研究する施設となる。
 約2万平方メートルの敷地に、地下4階地上20階建て延べ約15万平方メートル規模の病院を建設する。最高高さは約113メートル。RC一部S造でプレキャスト(PCa)柱・梁・床版や鉄骨梁、デッキスラブなどの複合構造となる。病院本体工事のほかに周辺道路の整備や、隣接する既存病院に接続する連絡橋新設も工事内容に含まれる。受注金額は約806億円(受注当時)。
 2022年8月1日に着工。現在は地上躯体工事と設備工事、仕上げ工事が進む。仮設開口を大きく設け、地下躯体工事を逆打ちで先行構築するセミトップダウン工法を採用し、掘削と搬出を合理化した。DfMA(製造組立容易性設計)を取り入れ、天井上の設備(配管、排水、ラック)などを現場付近の工場でユニット化して運搬。現場では据え付けと接続だけにすることで効率化を図っている。
 病院建設に当たり、病室のモックアップを作るなど発注者との合意形成に努めている。さらに設計段階からBIMを活用し建設、保守管理まで役立てている。山野義則総括所長(国際部門国際建築本部副本部長)は「シンガポールでは、延べ床面積5000平方メートル以上の工事に設計BIMの提出が義務付けられていることもあり、一般的に使用されている」と日本との違いを話す。池田和成工事所長は「BIMモデルを作る人材を同国内で確保するのは難しかったが、今回はインド系の会社に外注した」と説明する。
 同工事には現在約110人が従事し、7割がシンガポール人という。最盛期は2500人以上が従事する見込み。池田工事所長は「設備機器の現場取り付け施工が行われると進捗率が大きく上がる」と気を引き締める。