国土交通省や国内建設会社などでつくる「日ウクライナ・国土交通インフラ復興に関する官民協議会」(JUPITeR〈ジュピター〉)が本格的に始動した。3月5~7日に官民のミッション団が現地を訪問。戦後復興を見据え、日本の建設会社が参画できるよう環境整備に入った。ウクライナでは遠隔施工など日本の技術や資金力への期待が高く、手応えを感じた国交省は次回訪問の検討も始めた。
世界銀行の調査によると、ウクライナの復興需要は5240億ドル(日本円換算で約79兆円)に上る。特に被害が大きいエネルギーインフラや交通インフラの再建が急務。重要な橋梁をトンネル化する構想もあるという。国内外の避難者が戻るため、将来的な住宅需要も必要となる。
官民のミッション団は、国交省の小笠原憲一官房海外プロジェクト審議官をトップに、ジュピター加盟のゼネコン、建設コンサルタント、商社、流通企業ら15者17人が参加した。政府機関や金融機関、経済団体を訪問したほか、キーウ市内の再開発現場なども視察した。国交省の担当者によると、会談でウクライナ側からは破壊されたものを元通りではなく、より良いものに立て直す「ビルド・バック・ベター」という言葉が繰り返し聞かれ、経済復興への強い意欲を感じられた。
日本の技術などを紹介したところ、遠隔施工がウクライナ側の目に留まった。出征や国外避難で人材不足が深刻化する中、女性や戦傷者が建設工事に従事可能な技術として高い評価を受けた。遠隔施工技術は世界的にも日本がリードする分野で、人材不足という点で両国は共通する。国交省は次回訪問団を送る際、現地でデモンストレーションを行うことも検討している。
「キーウの街は戦時下にもかかわらず平穏で、通常の生活が営まれていることに驚いた」とある参加者は振り返る。防空網が整備され市街地への着弾は少なく、警報が鳴っても避難しない住民が多い。
外務省は全域に退避勧告を出しており、現地訪問のハードルは高いが、国交省は分野ごとに現地企業と交流を深める次回訪問を調整中。「対面でコミュニケーションを取る効果は大きい。停戦を見据えつつ、早くからつながりを作ることは重要だ」としている。