新社長/関電工・田母神博文氏、働き続けたいと思える会社に

2025年4月8日 人事・動静 [1面]

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 設備工事業界に追い風が吹くタイミングで、経営のかじ取りを任された。主に管理、営業部門を歩み、就任の打診時には「胸がざわついた」と明かす。過去に事務システムの全面刷新を取り仕切った経験などを生かし、社是である「ひといち(人間第一)」を追求していく。
 --就任の抱負を。
 「業績が伸びる中で重いバトンを引き継いだ。電力・通信インフラ、建築設備(屋内線・空調)の二つを事業の柱とすることは変わらない。今求められる脱炭素化などのニーズに応え、後輩にもっと輝くバトンを渡すべく業界ナンバーワンを目指す」
 「(技術職として)現場で働いた経験がない点は弱みかもしれない。できる限り現場に足を運んで会話をし、どうすれば働き続けられる会社をつくれるかを考えたい。現場を知り過ぎないからこそ、思い切った業務の分業化ができる部分もあるだろう」
 --どうナンバーワンを目指すのか。
 「創立100周年を迎える2044年に『グリーンイノベーション企業』の実現を掲げている。鍵は省エネと電化だ。顧客のエネルギーの使い方を可視化し提案するのが第一歩であり、ニーズに技術的に応える必要がある。価値を生み出すために、今から投資していく」
 「中期経営計画(24~26年度)では連結売上高6400億円を目指しているが、刻々と変化する環境を踏まえて数字は柔軟に見直す。建設コストの上昇に伴う投資抑制の動きには強い危機感がある。海外事業は将来的に売上高10%程度に伸ばしたい。M&A(企業合併・買収)も事業単位で広く検討している」
 --生産性向上策は。
 「そのうち設備工事の需給逼迫(ひっぱく)も解消され、また価格競争が厳しくなるだろう。同じ単価で、いかに生産性を高めるかが大事だ。特に電力は、効率化を促す新託送料金制度(レベニューキャップ制度)の期間中に量をこなす必要がある。DXやロボット化の研究開発を進める。社内の分業の仕切りを変えて事務も含め一緒にものづくりができる体制を築く。今年中に方向性をまとめたい」
 --人材確保の方針は。
 「できることは、なんでもやる。新卒採用では役員が出向くなどして学校や学生とつながりをつくっている。文系出身や外国出身の技術者を育てる多様な育成メニューを用意したい。定期採用の割合を見直し、中途採用も積極的に増やす」
 「従業員や関係会社、協力会社を含め業務に従事する人を守らず、顧客の設備は守れない。資格手当の拡充など働き続けたいと思える福利厚生施策を打ち出していく」。
 (4月1日就任)
 (たもがみ・ひろふみ)1986年明治大学商学部卒、関電工入社。2020年常務執行役員、23年取締役、24年6月専務執行役員、同7月最高戦略責任者(CSO)兼最高人事責任者(CHRO)。同社がパートナーを務めるプロバスケットボールチーム「アルティーリ千葉」の観戦が趣味。座右の銘は「上善水の如し」。東京都出身、61歳。