シンガポールと五洋建設-60年の歩みと戦略・3/市街地地下に整備する大型トンネル

2025年4月8日 論説・コラム [3面]

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 ◇難工事を日本の技術で効率施工
 シンガポール陸上交通庁(LTA)発注の「N105」は大型道路トンネル工事。同国の南北を縦断する全長約21・5キロのノースサウスコリドー(NSC)高速道路のN105工区に当たる。2018年8月1日に着工し、10月末で約50%の進捗率となっている。受注金額は642億円(受注当時)。
 NSC高速道路工事は北側に高架橋を架け、南側に市街地の一般道路の下にトンネルを整備する。五洋建設が担当するN105工区は南側の地下高速道路(全長約1キロ)。片側4車線、上下2連のボックスカルバート構造で地下高速道路を造る。地上部は病院や学校、ショッピングセンターなどの建物が隣接している交通量の多い繁華街に位置する。地下部分は工区内を既設のMRT(都市高速鉄道)が横断しており、高速道路と交差する箇所がある。
 既存MRTを上下に挟んで施工する。高速道路とMRTの最小離隔は1・5メートルしかない。慎重な施工が必要になるため、日本の特許技術である函体推進工法を代替案として提案し採用された。
 上越しのトンネル部で採用されるSFT工法(Simple Faceless Tunnel工法)は切羽掘削を行わず、ところてんのようにボックスカルバート(函体)を押し出すのが特徴。ボックスカルバート外周部に設置した箱形ルーフ(矩形推進管、1・2メートル角)を地盤とともに本体構造物であるボックスカルバートで水平に押し出し、置き換えることにより、地下構造物を非開削で構築する施工法である。
 荒木俊雄総括所長(取材時・国際部門国際土木本部土木事業部長)は「供用中の地下鉄の上下を横断するのが最大の特徴だ。技術的に難度の高い工事」と話す。
 同工事の入札は、価格よりも設計や施工方法など技術面に高い評価を与える選考方法が採用された。五洋建設は、最も技術的に困難な既設MRTとの交差箇所で日本の技術を用いた施工方法を提案。これまでの実績が認められ、競争入札で勝ち取った。
 荒木総括所長は「注目度の高い工事だ。期待に応えられるように業務を遂行する。日本人や日本の技術がすごいことを示したい」と力を込める。入社7年目の田島涼主任は同工事が初めての現場。国際部門を志願し、シンガポール勤務は5年目となる。田島主任は「安全第一で現場を自分の目で危険を察知し仕事を全うしたい」と意気込む。

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