山梨県は1日付の組織改正で、(仮称)富士トラム構想実現に向けた担当課「山梨・富士未来課」を立ち上げた。富士山の麓から5合目までをレールを敷設せず、ゴムタイヤで運行する新交通システムの導入を目指す。公道を走行できることから将来的には富士山とリニア中央新幹線山梨県駅(仮称、甲府市)、中央線甲府駅、県内各地などを結ぶ富士トラムネットワーク構想の構築も視野に入れる。
担当課によると構想案策定などの具体的スケジュールは未定ながら、庁内でスピード感を持って検討するとしている。
2024年11月に長崎幸太郎知事が、それまでの「富士山登山鉄道構想」を断念し「タイヤ式トラム」の導入を検討すると発表した。富士スバルライン(富士山有料道路)に次世代型路面電車(LRT)の敷設を検討してきたが、新たに鉄路を敷設することや概算で約1400億円に上る総工費など、計画を懸念する声が多かったことなどから方針を転換した。
鉄路からタイヤ式に転換することで大幅なコストダウンが見込まれる。一般道も走行できるため、既存道路を活用して富士山から県内各地に延伸可能となる。白線や磁気マーカーによる誘導方式の採用で、大規模な工事の必要がなく、メンテナンスも軽微となる。トラムは道路法ではなく軌道法が適用できるため、一般車両の通行を規制することができ、新交通システム導入の主目的である、来訪者数のコントロールや環境負荷低減にも効果があるなどのメリットを挙げる。
想定スペックは1編成の長さが約30メートル、幅約2・6メートル、高さ約3・6メートル。輸送力は1編成2連結でLRTと同等の120人。動力源は水素による燃料電池やバッテリー。技術なども含めて国産化も視野に入れ、既に国内メーカーにも打診しているという。燃料電池などは県内の水素エネルギー技術を活用する考えで、将来的には車両、燃料電池など機械・設備関係の県内調達も目指す方針だ。
スケジュールや事業主体などは未定だが、発表時に長崎知事は「富士山来訪者数の規制は待ったなし。リニア中央新幹線県駅との連絡は、リニア開業時期に合わせられることが望ましい」とスピード感を持って取り組む考えを示した。