全国地質調査業協会連合会(全地連、田中誠会長)は、地質調査業務の発注促進に向け官公庁への要望活動に力を注ぐ。国土交通省の統計資料を分析した結果、地質調査業務の発注量が他業種より伸び悩んでいる実態が判明。事業費増大に関する不確実性の大きな要因が地質・土質条件であるとし、調査の必要性や重要性を訴える。こうした現状や要望をまとめた冊子を全国の地区協会で活用してもらい、国交省地方整備局や地方自治体へ積極的に働き掛ける。
全地連は2月に「トータルコスト縮減に寄与する地質調査の発注促進を」と題した冊子をまとめた。2009~23年度に発注された工事や業務(建設コンサルタント、地質調査など)の契約額を調べたところ、工事と業務全体、建設コンサルタント業務の契約額は右肩上がりで推移。一方、地質調査業務は横ばいとなっていることが分かった。
全地連の担当者は「技術者単価の上昇で1件当たりの価格は上がっているが、地質調査業務の総量は変わらない。そのため、件数が減っている」と実態を説明する。
国交省が24年5月に開いた公共事業評価手法研究委員会の資料も分析。事業費の増大に関する不確実性の要因として、地質・土質条件が河川・ダム事業、道路事業とも上位を占めた。
全地連はこうした分析結果を踏まえ、「工事費に対する地質調査費の割合が減少している現状は、(公共事業の)トータルコスト縮減の目的に逆行している」と指摘。「地質調査を的確に行い不確実性を評価することは、工事中の不確実性の発現の抑制効果がある」として、地質調査業務の積極的な発注を促している。
全地連は、冊子1000部を▽関東▽東北▽北海道▽北陸▽中部▽関西▽中国▽四国▽九州▽沖縄-の各地区の地区協会に配布した。地方整備局や都道府県との意見交換や要望活動などの場で、冊子を活用したPR活動を行ってもらう。関東地区協会の意見交換では、自治体担当者から「このような状況とは知らなかった」「(発注の在り方を)考え直す必要がある」などの声が寄せられたという。