全国建設業協会(全建)の今井雅則会長は9日、参院本館で開かれた自民党の政策審議会(古川俊治政策審議会長)の業界団体ヒアリングに出席し、公共事業当初予算の引き上げや時間外労働に対する柔軟な規制適用などを訴えた=写真。今井会長は「建設業が憧れの産業になるためには、AIの活用や無人化施工で生産性を高められるよう将来に投資しなくてはいけない。そのための予算が必要だ」と強調し、公共事業予算の確保に理解を求めた。
建設業を取り巻く課題として倒産件数が増加傾向にあることや、他産業と比べ生涯年収の低さなどを指摘。資材価格が高騰し人件費が上昇する中で、国の公共事業当初予算が6兆円台で据え置かれている現状は「実質的な投資額の減少」(今井会長)との問題意識を示した。建設工事費のデフレーターが年間5%程度増加していることなどを踏まえると、国土強靱化実施中期計画は5年間で25兆円程度の事業規模が必要と根拠を説明した。
建設業を魅力的な産業にするための方策として、退職金の増額や柔軟な働き方なども提案した。現在の建設業退職金共済(建退共)制度での退職金は、掛け金を37年納付した場合400万円弱にとどまる。これを見直し、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベルに応じて掛け金を上乗せする複数掛け金の導入により、退職金額1000万円超を目指すよう求めた。
働き方改革では、屋外作業の多い建設業は夏の猛暑日や積雪寒冷地での作業などを考慮すると、時間外労働上限規制への対応が困難と指摘。「働ける時にしっかり働き、休める時に十分に休む」(今井会長)柔軟な規制の適用が必要と呼び掛けた。
今井会長の説明を受け、参院議員からは「物価が上昇している。(国土強靱化実施中期計画は)20兆円強からしっかり積み上げていく必要がある」「行き過ぎた働き方改革は見直さないといけない」などと予算の確保や柔軟な働き方に理解を示す意見が上がった。