6月から建築物バリアフリー新基準/容積率緩和特例拡充、公共工事で当事者参画原則化

2025年4月14日 行政・団体 [1面]

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 建築物のバリアフリー基準が6月に大きく変わる。バリアフリー法に基づく車いす使用者用のトイレや駐車場の設置義務規定が強化され、同時に車いす使用者用トイレの設置スペース分の一部を容積率に不算入とする特例を導入する。建築主側にはバリアフリー化に対応しながら賃貸などに利用できる床を増やせるインセンティブが生まれる。国土交通省は新基準を踏まえバリアフリー設計の指針も改定する。公共建築工事を中心に、計画の初期段階から障害者などの意見を反映させる当事者参画を促す。
 新基準は6月1日以降に着工する建築物に適用。最低限のバリアフリー対応を示す「義務基準」と、より高い「誘導基準」の両方を引き上げる。例えば車いす使用者用トイレで1人分の区画に当たる「便房」の設置数は、義務基準を現行の「建築物に1カ所以上」から「各階に1カ所以上(大規模階の追加設置も別途規定)」に見直す。
 義務基準への適合が必要なのは不特定多数や高齢者・障害者が利用する「特別特定建築物」のうち延べ2000平方メートル以上の新築や増築を伴うケース。これ未満の規模や、事務所や共同住宅などの「特定建築物」は適合が努力義務となる。
 同法では「第24条特例」として特定行政庁の許可を前提とした容積率緩和のルールを定めており、基準改定と同時に特例の適用要件を拡充する。従来はトイレだけでなく建物内の複数の場所で高いレベルのバリアフリー対応が求められたが、新たな要件では車いす使用者用トイレの設置だけで特例を可能とする。
 車いす使用者用の便房は標準的な仕様で縦横2メートルほどで、簡易ベッドなどを設けた大型の仕様もある。このうち一般用の便房分に相当する1平方メートルを除いた面積を容積率に不算入とする。国交省は義務基準の適合が努力義務となるオフィスビルなどでもバリアフリー化が促されると期待する。
 国交省はバリアフリー設計の指針となる「建築設計標準」を新基準を踏まえた内容に改定し、5月に公表予定。「建築プロジェクトの当事者参画ガイドライン」を同時策定し、周知を図る。ワークショップや現地見学などの方法を例示し、計画・設計から施工、維持管理までの各段階で取り入れる。公共建築工事では、延べ2000平方メートル以上の特別特定建築物を対象として2030年度までに当事者参画を原則実施とする目標を掲げる方針だ。