政府は建築物の建設から使用、解体までの二酸化炭素(CO2)排出量を把握するライフ・サイクル・アセスメント(LCA)の実施を建設会社などに促す制度を2028年度にも開始する。LCAの実施を促す誘導・規制措置を講じる方向。この前段階で建材・設備のCO2原単位やLCA算出の統一的な手法を詰める。LCAの結果が可視化されることで、設計・施工段階などでの脱炭素化の取り組みが評価される建築生産プロセス・市場の創出を目指す。
内閣官房に24年11月設置した「建築物のライフサイクルカーボン削減に関する関係省庁連絡会議」で政府全体が取り組む施策の基本構想を検討しており、同会議の幹事会案を3月末にまとめた。
関係省庁で25年度から制度の内容や導入スケジュールの検討に着手する。LCA算定の対象範囲は当面、一定の規模・用途に絞って開始し順次拡大する考え。当初からライフサイクル全体を射程に入れるか、まずは建材・設備の製造段階を含む建設時に限定するかの両にらみで検討する。これを念頭にLCAの実施を後押しする補助制度なども打ち出す。
同年度から国が建設する庁舎などでLCAを先行的に実施する方針も示す。一定規模以上の国の建築物で実施の原則化も視野に入れる。26年度以降、LCA算出方法の統一化や結果のデータ蓄積などを検討。CO2原単位の整備は、脱炭素化の効果が大きい主要な建材・設備を優先する。
制度化で目指す社会像として、脱炭素化に取り組んだ建材・設備や建築物への需要が拡大し、建設会社などによる脱炭素化の取り組みがさらに進む好循環の創出を描く。
LCAの結果は投資家・金融機関の投融資判断や建築物利用者の物件選定、有価証券報告書で義務化される方向のスコープ3(事業活動に関連する他社の排出)の開示などに活用される見通し。設計時のLCA実施による最適設計、脱炭素化に効果が高い資材調達や現場施工の進展などを期待する。