新年度が始まって2週間余り、進学や就職などで環境が変わった人は生活のリズムを徐々につかみ始めた頃だろう。一方で比較的自由が利いた学生時代の習慣からなかなか抜け出せず、四苦八苦している新社会人もいるのでは▼辞書を引くと、自由は「他から束縛されず自分の思うままに振る舞える状態」とある。制限を受けず自分自身があらゆる行動を決め、決断に伴う責任を受け入れる。仏の哲学者で小説家や劇作家としても知られるジャン=ポール・サルトルはこのような状況を「自由の刑」と表現した▼入社式で「自由な発想に期待する」と呼び掛ける経営トップが少なからずいたと思う。その通りと相づちを打ちつつ組織の一員になると、いつの間にか自由を忘れ画一的で安全運転な思考回路になりがちだ▼自由を謳歌(おうか)しつつ孤独や不安を乗り越え自分磨きに精を出す。現実を大切することが自由の刑と向き合うすべか▼自由に伴う責任を自覚して行動してこそ自分のありようが見いだせる--。要らぬ世話とは重々承知の上で、サルトルの言葉を借りてシニア世代から新社会人にこっそりとアドバイスを。