回転窓/もったいないを世界に

2025年4月16日 論説・コラム [1面]

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 古来、日本人は万物に精霊「つくも神」が宿ると信じてきた。室町時代に描かれた百鬼夜行図には鍋や琴などに宿るつくも神が妖怪に化けた姿で登場しており、物を大切に扱うことを教えている▼愛着のある装飾品などはずっと手元に置いておきたいもの。筆者も長年履き続けている靴を捨てるのが惜しく修理を頼んだ。きれいになった靴を履くだけで気分がいい▼無駄遣いを惜しむ時に使う〈もったいない〉。女性環境保護活動家でノーベル平和賞受賞者の故ワンガリ・マータイ氏は、この言葉を世界共通言語として広めることを提唱した▼建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞した建築家・坂茂氏は、廃材を極力出さないよう建築資材として現地調達できる紙に目をつけた。1995年に発生した阪神・淡路大震災では避難所の間仕切りに紙製の管(紙管)を使った▼13日に開幕した日本国際博覧会(大阪・関西万博)で海をテーマにした民間パビリオンの設計を手掛けた坂氏。大小3棟のドームがつながった建物は竹や紙管などを採用している。万博会場から再び〈もったいない〉精神が世界へ広まるだろう。

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