国交省/建築制度で中長期ビジョン、脱炭素や担い手テーマに有識者議論スタート

2025年4月21日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省の有識者会議で、中長期的な視野で建築制度の在り方を探る議論が始まった。建築基準法や建築士法の改正など目先の対応にとどまらず、より長いスパンで建築分野で表面化する社会的要請や政策課題に官民双方で取り組むためのビジョンをつくる。当面は政府全体で取り組む建築物のライフ・サイクル・アセスメント(LCA)実施を促す制度の具体化に取り掛かる予定。建築設計・施工の担い手の減少も深刻とみて、技術向上や設計関係の資格制度の在り方も議題となる方向だ。
 社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)に設置した建築分科会と建築環境部会、建築基準制度部会の合同会議を18日開き、議論を開始した=写真。合同会議の開催は3年3カ月ぶり。今月、全面施行となった改正建築物省エネ法・建築基準法につながった前回の議論を引き継ぐ。
 前回から積み残した検討課題は▽非住宅建築物の質向上の誘導▽既存建築ストックの有効活用▽木材利用の評価・促進▽新材料・新技術の導入促進▽持続可能な市街地への集団規定の在り方▽官民の技術者などの確保・育成-の六つ。人口減少や災害多発、脱炭素化、DXの進展などの情勢変化にも対応する姿勢を示す。
 委員の学識者や関係団体からは、例えば既存ストックの改修や新材料・新工法の導入にインセンティブを付与する方策などで意見があった。新築を前提とした法体系を見直し、改修を促進する踏み込んだ対応を求める声があった。改修や維持管理を持続可能とするための担い手確保・育成策の必要性も指摘された。
 政府全体でLCA実施を促す制度を2028年度に創設する方針が示されており、これも念頭に脱炭素などに効果的な新技術の実装を公共調達で先導すべきとの意見も出た。民間市場に任せてはコスト負担が課題となる可能性があり、技術実証のフィールドとして公共建築工事の役割に期待する声があった。
 当面は▽中長期ビジョンの論点▽LCA実施の制度化▽集団規定の基準-の三つをテーマとする会議体を別途設置し、9~10月の次回会合に成果を報告する。26年1月ごろの中間まとめを経て、27年春ごろの中長期ビジョン策定を目指す。