建設DXを推進するArentがゼネコンらを対象にアジャイル開発の現状を調査した結果、アジャイル開発手法の認知と実践で大きなギャップが存在していることが分かった。回答企業の約半数がアジャイルを認知しているものの、業務やシステム開発にアジャイル手法を取り入れているのは3割以下にとどまった。多くの企業が導入に慎重な姿勢を示した。
アジャイル開発はソフトウエアやシステムの開発で短期間を一つのサイクルとし、必要な機能ごとに開発を進め、実際にリリースすることを繰り返す手法。短いサイクルで開発を進められるため、現場のフィードバックを反映しながら改善を繰り返すことができる。
暗黙知を徐々に形式知へと変換し、最適なシステム構築を実現する。一般的な開発手法では、初期段階で仕様を確定させる必要があるため、言語化されていない暗黙知を前提としたシステム開発は難しかった。
調査は2024年7~12月に同社が登壇したセミナーや展示会に来場した建設業の従事者を対象に実施。AIの導入状況や活用実態に関するアンケートで、有効回答数299件をまとめた。
「アジャイルという思想(手法)を知っている」と回答した割合は49・6%、「知らない」と回答した企業が50・4%と差は少なかったものの、業務でのアジャイル手法の活用状況では、「全面的に取り入れている」と回答した企業はわずか1・9%だった。「一部取り入れている」と回答した企業は28・2%となり、取り入れている企業は計30・1%にとどまる。「取り入れていないが検討中」5・8%、「取り入れていない」18・1%、「わからない」45・9%だった。
社内のシステム開発でアジャイル手法を「全面的に取り入れている」と回答した企業は1・5%、「一部取り入れている」と回答した企業は21・8%だった。「取り入れていないが検討中」は5・4%、「取り入れていない」が16・9%、「わからない」が54・4%となった。
Arentは「建設業界の技術やノウハウは、長年の経験や職人の勘に依存する『暗黙知』として蓄積されている。この暗黙知をデジタル化し、再現性のある形でシステム化するには、従来の開発手法では対応が難しく、アジャイル開発が不可欠だ」と指摘している。