◇皆がまいた種を育てていく
三機工業が22日に創立100周年を迎える。建設資材の輸入を手掛けていた三井物産の機械部を母体として1925(大正14)年に創立し、12人で業務を開始。関東大震災を機に近代のビル建築が普及し始めた帝都の復興を、設備工事の面から支えた。現在はビル空調衛生や産業空調をはじめ、主に八つの事業を展開する国内有数の設備工事企業へと発展を遂げている。石田博一社長に自社の現在地と、これから目指す先を聞いた。
--歴史を振り返って。
「100周年の節目を社長として迎えられたのは光栄だ。当初は三井物産と大谷工業所という建設会社の技術者、事務員の総勢12人で始まったと聞く。最初の大仕事が東洋レーヨン(現東レ)滋賀工場の建設工事で、産業空調の礎となった。その後は暖房や換気といった設備工事から石材や建具、金庫など多様な建設資材の調達、施工を行って多角経営を推進し、この姿勢は現在の総合エンジニアリング会社につながる。高度経済成長期には名だたる超高層建築の設備工事を手掛けて事業成長した。100年の歴史には苦しい時期もあったが、お客さまに恵まれ、仕事に注力し続けたことで今がある」
--変わらないこと、変えるべきことは。
「変わらないのは創立当初の社是である忠実、勤勉、奉仕の精神だ。勤勉な社員たちは誇りであり、これからもお客さまのニーズに応えて社会的価値の向上に努める。これから取り組むべき部分は付加価値を創造しながら生産性も向上させる事業展開である。デジタル化やロボット化など建設業には課題も多いが、積極的に取り組んでいく」
--5月に公表予定の新中期経営計画の方向性は。
「『人に快適を。地球に最適を。』をスローガンに建築設備事業のみならず、搬送・物流の機械システム事業、水処理や廃棄物処理の環境システム事業も含めて社会インフラ構築の担い手として、もう一歩先に行く」
「10カ年の長期ビジョン『Century2025』(16~25年度)の期間中は売上高が増え、働き方改革も進んだ。この勢いに乗り、皆の力を発揮できる場を提供し、次のチャレンジへ下固めをしたい。社内から事業や技術のアイデアを募る『地球MIRAIプロジェクト』では、約200件の応募が集まった」
--次の100年へ。
「最初の社史である35年史は、世の中にないものを、あらゆる可能性に挑戦して創造しようというフロンティア精神にあふれている。23年に350周年を迎えた三井グループで、100年企業は若い方だ。社員が能動的に働き、何かやってみようという意識を醸成する環境をつくりたい。皆がまいた種に水や肥料を与えて、育てていく」。
(いしだ・ひろかず)