インフロニア・ホールディングス(HD)の岐部一誠社長が日刊建設工業新聞の取材に応じ、アクセンチュアと1日付で設立した共同出資会社「インフロニアストラテジーアンドイノベーション」の展望を語った。インフラ管理・運営で蓄積したノウハウやデータを生かし、デジタルを活用した地方創生支援に注力するアクセンチュアとのシナジー(相乗効果)を一段と高める方針。これまでインフラ・建設分野で正しいとされてきた考え方ややり方を見直し、より最適な形に再構築してさまざまな課題解決につなげる考えだ。
新会社の出資比率はインフロニアHD81%、アクセンチュア19%。社員は約100人。前田建設で主に情報システムや経営企画、アクセンチュアで業務改革やITなどに携わっていた人材が集い、社長は岐部氏が兼務する。
取り組みの大きな方向性として、「データに基づいて判断・行動するデータドリブンによるビジネスバリューの向上や業務変革の継続」「AIなど先端技術を事業で有効に活用する方法の最適化」「世界中に80万人の社員を持つアクセンチュアの人材ネットワークを生かしたシンクタンク機能の強化」などを挙げる。
新会社を通じ最優先に取り組むのがマネジメントに着目した建設事業のDX化だ。「AIはデータを使って人間では想定できない予測・分析ができる。多くの建設会社がAI活用でロボティクスなどによる生産性の改革を志向する中、よりマネジメントの方にウエートを置くべきだろう」。現場での原価管理や意志決定のプロセスなど、今もアナログの要素が多く残る建設事業のマネジメントを「ルールチェンジする」と意気込む。
AIなどの先端デジタル技術を「意思決定の考え方を変えるためのツール」と捉え、さまざまな事象を深く分析し経営判断に役立てていく。営業や設計、調達、施工といったバリューチェーン(価値連鎖)全体の人員や原価、工程などのデータを連携、可視化し、人材配置やコストなどマネジメントの最適化を進める。
インフロニアHDは3年前からアクセンチュアと協業。前田建設がコンセッション(公共施設等運営権)事業者として管理する愛知県の有料道路や神奈川県三浦市の下水管では、EAM(資産管理)ソフトウエアや光熱費削減ソリューションなどで予防保全の効率化に取り組んできた。引き続き知見や技術を結集し「インフラサービスの質を落とさず、さらに高めながら維持コストを下げるといった課題にチャレンジし、企業価値の向上を図る」。
岐部氏によると、2月に新会社設立を発表した際、「全国の自治体からアクセンチュアに問い合わせが相次いだ」こともシナジーの表れと見る。埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受けインフラ老朽化対策の重要性が一段と高まる中、上下水道事業担当者からの問い合わせが特に多かったという。
新会社がすぐ取り組める活動には「全体最適に基づくIT運用費用の削減」を挙げる。地域のインフラ事業だけでなく、将来的には「地域建設業のマネジメントもターゲットになり得る」と展望。グローバルなシンクタンク機能として未来志向で新たな戦略を描きつつ、より良い社会の創出に貢献していく。