大林組/複合災害を再現する実験装置開発、被害軽減に有効な工法や災害対策の検証可能

2025年4月25日 技術・商品 [3面]

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 大林組は、地震と降雨の複合作用を考慮した実験が可能な装置「遠心場(えんしんば)降雨発生システム」を開発した。地震と降雨が発生した時の地盤状況をシミュレーションすることで検証可能。大林組技術研究所(東京都清瀬市)の遠心模型実験装置に搭載し、既存の実験設備では再現できなかった複合災害の状況を作る。複合災害による被害軽減に有効な工法の検討や災害対策に役立てる。
 同装置は複合災害に対する影響評価や対策効果の検証に活用。遠心模型実験装置の回転で動的バケットが振り上がり、システムが横向き状態で遠心力が作用することで実際の土構造物と同じ力関係で被害を再現。縮小模型に対して遠心力を作用させて、地震動や構造物に働く力を与え実物と同等の挙動を再現できる。
 実際の降雨を再現し、地中の水分量が増加して不安定化した地盤が崩壊するまでの現象を再現できる。弱雨~強雨のさまざまな降雨強度や、最大2000ミリの総雨量など条件を設定でき、現状の土構造物の健全性評価や新工法の効果検証が可能になる。
 地震動を再現した実験も可能。降雨後に地盤内の水分量が増加した状態で地震動が作用する現象や、地震動でダメージが蓄積した状態で降雨が作用する現象を再現する。従来はなかった降雨と地震の複合作用を考慮した評価手法の構築や新工法の効果を検証できる。高速道路や鉄道の盛り土構造物だけでなく、斜面や河川堤防、ダムなどの土構造物に対しても、同様に健全性評価や新工法の効果検証が可能。降雨や地震発生後の警戒レベルの設定検討にも役立てる。
 今後、遠心場降雨発生システムを活用して、降雨と地震の複合災害に強い土構造物を構築する工法を開発する。安全・安心なインフラの提供に貢献していく。