建設業従事者の退職金の引き上げに向けた具体的な検討が始まった。勤労者退職金共済機構(勤退共、梅森徹理事長)の建設業退職金共済事業本部(建退共本部、大澤一夫本部長)が事務局を務める有識者検討会議が25日、都内で初会合を開いた=写真。建退共制度の中で、1人に複数の掛け金を納付できるようにする複数掛け金制度の導入などについて議論する。団体などの意見を取りまとめ、厚生労働省が検討を引き継ぐ。
「建退共制度検討会議」を開いた。学識者、建設業団体の関係者らで構成。座長を東京大学大学院工学系研究科の堀田昌英社会基盤学専攻教授が座長を務める。厚労省、国土交通省、建設業振興基金がオブザーバーに入った。複数掛け金制度、民間工事での建退共制度の普及・推進、電子申請方式の利用促進のインセンティブなどを検討する。
複数掛け金制度は、建設キャリアアップシステム(CCUS)による能力評価も参考にしつつ、現在の掛け金の日額320円に上乗せする複数掛け金を段階的に設け、電子ポイントで付与することも可能とする制度を検討する。建退共は、掛け金を40年程度納付した場合の退職金を1000万円にする考えを24年度に示した。現在の日額320円を37年間納付した場合は388万円で、大幅に引き上げることで技能者の処遇改善と担い手確保を目指す。労働政策審議会(労政審、厚労相の諮問機関)の勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会は、建設業の退職金水準に関する検討結果として複数掛け金制度の導入を検討する方針を3月に示している。
検討会議は、民間工事でも建退共制度を普及するため、CCUSの機能を生かした自動掛け金について、元請と事業主の負担割合の自主ルールの在り方を詰めていく。
初会合で梅森理事長は「建設業の担い手確保が大きな課題になっている」と指摘した。その上で「技能レベルに応じた処遇改善に資するよう複数掛け金制度の検討が盛り込まれた。在り方を検討するために会議を立ち上げた。目指す制度が業界の皆さんにとって使い勝手良く、真に処遇改善につながるようにしたい」と述べた。